みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

2020-01-01から1年間の記事一覧

階段

* 外階段の半分に腰かけて、人生を降りる口実ばかり考えていた。生まれてからずっと、考えてきた。居場所をつくること、見つけることに疲れ、もはやなにもかもがうんざりさせる。男にも女にも嘲られ、親にも姉妹にも理解されず、ただただじぶんの不出来を呪…

方言詩の試み

* 秋のむくろをあつめてきて、 根菜やズッキーニと寄せ、 酢漬けにして、 食べたい 酒のあてにはちょうどいいだろう たぶん階段を踏み外したとき、 (手のむこうには溝があって、 ひとが歩いてはるから なんや気持ちが わるいんや) 壜の酢漬けを抱いて、 …

水路

水路を逆さに歩く 天から地までつづくそれを壁にむかって深く潜る 運転手のいない畔 藪と、地平線とを切り離してから 壁のなかに花を植える やがてその花が手に触れるまで おれは壁に迫るのだけれど もうひとりの男がカメラを持って おれを観察してる 映像も…

裸体の悪魔

高架道路の歩道で、男がずっと火に焼かれてる 先週の金曜日からずっと火に焼かれてるのは、たぶん忘れられない痛みがあるからだ 雲雀のいない十二月 ふと拾いあげたものが聖痕だったからといって神になるわけにもいかないとき、じぶんの塒でだれかが写経用紙…

夢の文体

眠りのなかで書かれた小説や詩の一行が覚醒のなかですらわだかまるときがある 目覚めたときには、その文体を喪ってる なにやら寓意を持ってるらしい一行に歓び、メモ書きをするときには、その愉しみはもう消えてて いくら再現できても、メモ以上にはならない…

花とゆめコミックス

* 隠蔽されたおれの告白 人生の私家版 再建の叶わない納屋のような人生 夢は失せ、馬はくそをひりだす 時の檻に坐ってゆうぐれを待つあいだ、きみはどこにいる? いったい、どこへむかって歩くのか 星の陰謀論 呪術のない神話のなかで 組み拉かれた裸体だら…

バス停通り

年老いた窓たちはどうにも言葉づかいがわるい 暮れても明けても景色を面罵するかれらにできることがない ヘタな文章のようだ、不運な女のようだ、とてもとてもしてやれることはない 男はじぶんが窓になろうとして、すべての窓を叩き毀した それでもじぶんが…

ショー・マン

過ぎ去ったもののためにみずから現在を喪うものがいる ミショーの書いたボロ屑みたいな、両の手になにもない男たちが見えないものにすがって、生きるふりをつづける こんなにも人生には描く必要のないまぼろしや夢が、時代の漂流物となって、戦慄いてる とこ…

歌とギターと鰥夫の生活

初恋の嵐 Untitled * ボイス・トレーニングに通ってる。まだ2回めだ。半年をほどつづけて効果がなかったらやめようとおもってる。来年中にガット・ギターのレッスンにもいこうともおもってる。歌は、自習のための本と、ウルトラボイスという発声矯正の器具…

11月 / NOV

11/01 2時過ぎに眠る。8時15分に起きる。もっと眠っていたかったが、だめだった。朝餉。喰って朝寝。起きて時間潰し。図書館からメール。13時過ぎて外出。14時まえにもどる。「エゼキエル書」と「われら不条理の子」。帰って湯浴み。しばらくして午睡。夕方…

断章

* おれはTwitterで、ほかの詩人たちと繋がろうとしない。ひとと繋がることになんら、神聖なものを感じたりはしない。鬱陶しい決まり文句をお互いに嘔いて、これからはじめる道連れになんら花を咲かす気にも、おれにはなれない。糞づまっているからといって…

天籟とピンボール

* 獅子神の蹄のあとに咲き誇る花があるらし血の匂いする やまなみに融けるものみなすべて秋暮れてたちまち花かげもなく 社会性なきゆえわれに降りかかるプレヴェールの枯れ葉のあまた 自裁ならずして存ることのなさけなさか道失えるきみ 波に咲く花かとおも…

アルコールはもはや、

* アルコールはもはや、かつてのように気持ちのよいものでなくなった。かならず連続飲酒と悪酔いが待ってる。つぎの朝には起きることもできない。だのにやめることができないでいた。あたらしい仕事が決まった11月20日の朝、おれは寝過ごしてしまった。バス…

夜長の蠅

単純に必要とされないことが ぼくをぼくたらしめる そして単純に求めることが ぼくを苦しめる だれもが知らなかった経験が降る町で だれもが見ないでいた過古が経過する町で ぼくは花を折る ぼくは花を喰う

時間についてのメモ

過古をなかったことにはできないとしても、 いくつかに分けて捉えることはできる ピンボール・マシンのとっての夜が ベンダー・マシンにとっての午よりも長いか、 さすがにぼくもわからないけど

ボール紙の犬と歌論

* やまなみに融けるものみなすべて秋暮れてたちまち花かげもなく * 一首詠んでみる。大したヴィジョンもサウンドもなく、即興で書く。考えて書かれたフレーズはせいぜい平仮名の「やまなみ」、そして「暮れてたちまち」ぐらいで、あとは勢いにませた。おれ…

discard man

希望的に見えても、 それは見せかけ そのじつ、うらがえして、 たくしあげた、生地の、 膚のような、裏地 もういちどと、 求めて、 53を4に喩え、 2時を洗にくわえて、 なお、ひらくのはきみ なお、閉じるのはおれ ひたいのうしろに気をつけて奔る、 機体の…

普遍とは

* 花の名を知らないままで大人たることのすがしさあればいいのに 道くれない 案内板の文字かすむ 読めるふりして歩む黄葉よ 軒濡れてしたたる水の粒子たちキビの葉っぱをいちまい奪え アルカディアほむらのなかで示される少年時代の悪い種子だよ 駅過ぎる外…

黒い冬

* 不倖せ倖せ測るものさしはきみの睫毛のいっぽんでいい 永久語るきみの追憶いまだ火が燃えているのか問いかける窓 木々燃ゆるごとくにならぶ素裸足の少年ひとり雲ならべおり 水怒るような雨降るあしたには秋は終わってしまうと語る 便箋歌――夏の季語にて狂…

師弟記念(森忠明からの葉書)

新作拝見。『タンゴ』、『黄昏』に名歌多し。「世界一のペシミスト」シオランが、パリの銀行で貯金通帳をのぞいている自分を心底おぞましく感じているような、まっ正直な歌が三つ四つあって面白かった。ただ「散文」や「詩」にいつまでたっても、順三郎のい…

10月/Oct

* 10/01 深夜過ぎて日記を編輯、ブログに投稿。床に入る。目醒める。まだ眠い、でもけっきょく起きる。朝餉。9時まで時間を潰す。口座を見る。保護費が減額されてる。¥89,290だ。¥1,304足りない。いったい、どうしてだ? まさか文学フリマで¥5,000入った…

山犬伝奇

* 手のひらの葡萄の種を温めてやがて来る月占う真午 狼を祭りて濁る水まくら熱を帯びたるパセリ散らばる 岸渉るむこうに過古のぼくがいて怒りにまかせて麦を嚼んでる 豺の血が匂うのは薄原ヘリコプターをいま見喪う やまいだれいろはにほへとちりぬるをいま…

悩める多芸無才

* ともかく、いつもいろんなものに手をだして、手を焼いて、身を焦がしてる。好きなものがいろいろとあって、道をひとつに絞れない。小説、現代詩、短歌、写真、音楽、絵――そのなかでひとり蜷局を巻いてる。いったい、なにがじぶんを幸福にしてくれるだろう…

テレヴィジョンの夢魔たち

* 逆さまのテレヴィジョンより受像さる夢魔のうす笑みわれを慰む 道づれとなりぬがひとり沖に立ち灯台守の真似をせし夢 暮れ落ちるコンビニエンス・ストアの店員の女の子が星を指さす かりそめの男歌たるわが暮らし半裸のままで窓を横切る わが母に手をばか…

好きになること、きらわれること(絵本のための試み)

* 十月のさみしい窓辺の席で、ぼくは授業中だのに空想にふけってた。浜崎先生のいうことはもうなにもわからなかった。学習ってやつに取り残されてぼくにはなにを考えればいいのかがわからない。もう六年生になってしまった。いいわけはできない。ぼくは学校…

ココナラにてサービス販売開始

短歌・現代詩へのアドバイスをします おもにつくり始めたばかりのひとが対象です(例外あり) // ココナラにてサービスの販売をあたらしく始めます。詩作品へのアドバイスと校正です。詩集の制作についても追加でサービス販売を行っていく予定です。よろしく…

夜のスカーフ

* 暮るる窓飛び立つだろう幻覚のなかに存っては羽ばたきやまず 花房の月よ充ちよ充ちよ充ちみちよたとえばぼくの憂鬱の上 林檎飴今夏も食べずに終わり来てひとつ齢を過ぎるかなしさ 草はらに投げだしたもの みな光る 両足つつむスカートですら 傘なくば愛語…

黄昏

* 6階の少女はひとりうつむける涙の雨を捧げるために 光りなき両眼のうちに喪えるなまえのあったものたちなどを 星幾多あれどもわれの手にはとどかず伊弉冉さえも憐れな眼する 点描画の世界が濡れる滲む点いくつかに祈りいくつかにふるえ 窪地にてさまよう…

たとえば赤いダウンパーカーのように眼のなかに入ってくるものたちが たとえば青いシグナル・ライトに反射して逃げ去ってゆくものたちが 熾きのなかで吼え、そして口ごもる ことばのなかで吃る意志、そして浸透する汗 薄い胸筋のなかでくり返される過古の一…

口遊むだけだから、

レンタル・ビデオがモスクに改装されたから、 映画にゆずぶられ、 怯むのはわたし 解のない、 問いかけがつづく通りを越えて、 なお問うことの青さ 泊地を過ぎて、 遠く、 遠ざかる画面が8kウルトラで迫っては、 そのおもざしがきみでなかったというだけの理…