みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

普遍とは

 

   *


 花の名を知らないままで大人たることのすがしさあればいいのに


 道くれない 案内板の文字かすむ 読めるふりして歩む黄葉よ


 軒濡れてしたたる水の粒子たちキビの葉っぱをいちまい奪え


 アルカディアほむらのなかで示される少年時代の悪い種子だよ


 駅過ぎる外科医みたいな男いて ガーゼの傘を展げそんじる


 みどり死す ガードレールの終わりにてひとり黙って祈る咎人


 いまになって悲しくなった、自動車がだれも乗せずに坂を走るに


 手を繋ぐようにお寺のかげに立つ探偵少年たちの蝋石群


 意味にまだ触れないままで擬態する花かまきりの現代詩かよ


 きみがまだ決定論にいるとして為すすべもなくぼくは遇いたい 


 ゆうぐれの貨物列車をかぞえ終えやがて理由のない道歩く


 アカネチル祐子のいない街変わるなんにもいわない冬の針金


 おもいでといえるものなく漆喰の皹をめくって記憶を飾る 


 いまさらに未来を欲す/普遍とはウスバカゲロウ果てるところか

 
   *