みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

まちがい

過去を走り去った自動車が、やがて現在へと至る道 それを眺めながら、ぼくは冬を待つ ぼくはかつて寂しかったようにいまも寂しい こんなにもあふれそうなおもいのなかで、 きみのいない街を始終徘徊してるのさ これまでの災禍、そして怒り なにもかもが一切…

夢のスケッチ〈Pt.01〉

かれは衣装入れに手を突っ込んでなにかを探している それは去年のセータかも知れないし、水色の恋かも知れない 台所では子供たちがきのうの誕生会を回想している もしかしたら、ケーキが少なすぎたのかも知れないな そうかぼやいてなにかを探している でも、…

暗がりで手を洗う

暗がりでくそをして、 暗がりで手を洗う 洗面台にも、 浴槽にも、 魂しいのおきどころが見当たらない たしかなものはタオルだけで そのタオルもひどく汚れてるのはいったい、 なぜかなのかを思索してる かつて保護房の拘束のさなか、 看護人どもの見守るまえ…

夢であることの悲しみ

おそらく、 夢であることの悲しみは だれもない室で展らいた本みたいなものだ 町の中心で戦争が始まったから、 エールとビールを開けて祝福する ひとを憎悪にかりたてるすべてが好きだ でも、これだって夢、じぶんが目醒めてるという夢 囲いと鈎を身につけた…

夜の雷光

夜にさえも見放されて 飛び起きておもう かつて惹かれた女たちを そしておれをきらった女たちを 氷上の稲妻みたいに去ってしまったなにかが おもての車のポーチを照らす いつまでもおれをはなれないかの女らのこと、 眠れないからだが求める、皮膚の安寧 あ…

家政学科

* 母なるものへのいかがわしさが あるとき納屋を焼いてしまう ぼくがほんとうに幼かったときを目指してビニールは回転する それが本音だったろうてひとりがいった なんの助けにもならない辞 母さん、ぼくはもう一度だけ会って、辞を持たずに確かめたいんだ …

* だれがいったい鍵をあけてしまったのか ひとがガラス板のある風景を過ぎるのは正体を失った11月の企み そしてためらいのなかでおれは身体の痛みに耐えている 生きる方法を見失って、夜の廊下に倒れ、そのまま夢を見る 夢はカラー、16ミリで撮影され、モノ…

white heat 

www.youtube.com * 粛清された犬どもが夜にむかって吠えている 大勢の観客が回転する場所で、花火が炸裂する 仄かに明るくなった公園で、子連れの男が反転チェストを決める 特撮ヒーローたちの抜け殻が、永遠の夏休みのなかで甦るのはきっと幻だ 最新のリマ…

誤解

充ちたれたあの夜のこと わたしについて あなたが語ったことやなんか 詩は誤解の産物に過ぎないと、 おもい知ってしまった 5月の暑い夜 充ちたれたあの夜のこと あなたについて わたしが語ったことやなんか 死は誤解の産物であって欲しい そうおもったわたし…

side order

* たとえばあのひとが、 ひとにならず、 辞そのもので あったなら、 花のために悼む 星が乱反射する路地裏で あのひとの詩を見かけた、年号のない日付 あまりにもおれはおろかだった そしてかの女を苛む棘のようにその世界に存ったから、トマトクリネの皿を…

ボストンでは禁止

* おれはたったいま、ビル風に吹かれた一枚のスリップを眺めている ここは小さなアパートメントの最上階 地上ではひとりの男が戦闘機めがけてジャンプしている 声はここにない 中枢都市の神経を逆なでするような陽物が痙攣のなかでひどく気持ちいい 石油が…

終わりのビート──田中修子へ

かの女が死んでしまうのをおれはどっかで予期してたんじゃないか かの女の人生にちらつく死臭、強姦、家庭での暴力、そして自傷行為、自殺未遂 いろんなものがおれの通りを走っては、工事現場に激突する、 そして瞑目するなかでいちばん終わりに観たものをだ…

radio days

* 花の懶惰が咲き乱れる そんなに美しくていいのかと呼びかける 回転草とともに去る一匹の禽獣が薄明るいほどろのなかで、輝きながら消滅する 樹液を通した世界があまりにも脆く、突き刺さる森はあるとき、スローモーションで顔を変える 一匙の塩と、花びら…

青い芝

青い芝は警告だ おまえのうしろに潜むものへの静かなる警告だ たとえばおまえがボールを見喪ったとき、 キャッチャーミットがからぶりして、 おまえはおまえ自身を忘れてしまう そしておまえのなかで芽吹くものにおまえは敗れる そして長い休眠の時間をテラ…

喪失

* 星の気まぐれのせいか、頭痛がやまない 方位を失った夜がおれのなかで疼く回数を数えつづける なまえのない花がフルオートで発射された 季節はわからない 地下鉄にゆられる脊髄がいまにも弾けそうだという理由で抜き取られる 熱病に罹った群れが朝を待ち…

帰途

* 三沢では雨すらも言語になる 帰途を失ったひとがレンタルビデオの駐車場に立つ 傘がない秋口にはからっぽのボトルがよく似合う したたかに酔い、そして瞑目するあいだ、すべての鳥が、カチガラスになったような錯覚をした それは10月の暑い夜 冷房装置の…

10月の暑い夜

* ブラジルから来た少年が通りで撃ち殺される 被疑者は嘆きの壁で、沈黙を貫いている 取調室は熱で彎曲していて、とても歪だ キュビズムが侵入した形跡もないのに、シュールレアリズムが混入したわけもないのに、ただ一輪の花が中央に活けられている レモン…

花に嵐

* ハナニアラシ 花にまつわる文法についての挿話 送り火がまわる芒原の果てでホールデンを幻視する鰥夫の男 発熱のやまない室で、氷水が爆発する深夜 仔牛の肝臓を輪切りにする作業のなかで、淋病患者の呻きが聞えた 惑星は消える 失われた12使徒を妄想する…

gloomy days

* ないがしろにされた帽子がいじけている パンクしたはずのタイヤが蘇生する秋 右手から左手までの距離で運行される靴が交通渋滞のせいで凋んでいる 解体工事の終わり 道が霞んでしまってよく見えない 町がひるがえるところで生活が始まっている 当然のなり…

green hill hotel

* 星の所在がわからないばかりに、だれもいなくなった室で銀鮭を輪切りにする もはや秘密を持たないからだが鬱と躁のあいだを駈巡る 天文学と植物学を結合したあの手が 男の内奥に侵入して帰って来ない夜 ヴィジョンは討論されないまま、かれの脳に移植され…

星の子供たち

www.youtube.com * インタープレイの遊戯が終わったあとに立ちあがった少女が潜水病にかかってしまい、ぼくはとても悲しい グラスにウォッカを注いで、熱い氷を入れる たったいまはじまったばかりの喜劇が悲劇でなかったというだけの理由で撃ち殺される 兎…

a vision

www.youtube.com * すべてが星に還るとき、射貫かれた魂しいが歩き去ってしまう 駅のポスターが燃えながら笑むとき、女工たちが波のようにゆれる かたわらに犬を連れた男が空中散歩を試みる夜 できそこないのじぶんを正当化したいがために、電柱を登る たと…

the beach boys strikes again

もしも死者が定型ならば、 生者は不定形ということなのか 水に浸かった流木が沖に着くとき ぼくのなかに存った永遠という辞がすべて、 駅という一語に置き換えられるのはいったいなぜか いままで忘れられてきた問題集が解剖される夜、 ビニール傘はなぜレン…

rush over the lifetime

* ラッシュフィルムを装填する婦人会の集いが終わる 月曜日の朝どき 乱反射する小島なおが韻律のなかで回転するのを床屋の主人が見守っている 薄汚れた窓だった スカーフの赤さがあたらしい9月、それを求めていっせいに選手たちが飛び込む 土はやわらかい …

変身

* 映画が終わってしまった 夏の情景設定がうまくいかない 配役を忘れたスクリプターが聞き覚えのない歌を口遊む 律動する心臓の音楽 サティとフォーレをちょうだい グレープフルーツのかわりに 機銃掃射された駄菓子屋で、変身ベルトを毀してしまった 子供…

魔物

* 魔女の車は燃費がわるい 煙を吐きながら走る ブレヒトのミュージカルを聴きながらハンドルを握る かの女の車はひとの魂しいを通過する そしてカーブを超えて見えなくなる たぶん、おれは語るべきじゃないのかも知れない 夏のゆらぎにやられ、水を吞みすぎ…

夏の終わり

* 陽物志向のつよい主人公について語る必要があったのは真夏 発見された死体には金塊が隠されていたという事実ともにやって来る真夏 ボートレースの舟券師がセンタープール内を見渡す午後 脂肪を蓄えた腹で、スポーツ新聞を抱えて、静かに歩く いっぽうで主…

a dead man with rainlung [part 2]

* 花が降る 桔梗が好きだった子供時代をおもうとき、葬儀屋の娘が剪定鋏を失ってしまう だからといってみな殺しにするわけにはいかない 時計職人の眼のなかの針 はじめて動きだした時間がじぶんを獲得するなかで、わたしは税官吏と出会う かれは虫垂炎を患…

a gaslighting with summer

* 愉しい対面授業も終わりです 夏の光り、あるいは突堤のひとびとが転落する海が大好きです 電子計算機が回転するデパートの屋上で、演説をつづける右翼のために水を 水を汲んで来ます やがて暗転する頭上で雲がわだかまる㋇、息子たちの誕生日を他人が祝っ…

sentimental city night

* 男の顔が心臓と酷似する夜だった カーブミラーのなかで膨張しつづけるフロント係が一瞬消えてしまう 涙みたいなビート ないもないところに回転灯だけが寂しい からだの部品を少しづつ失いながら歩くひとびとがキーパンチャーを売却するのは安全地帯の範囲…