みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

夢の文体

 

 眠りのなかで書かれた小説や詩の一行が覚醒のなかですらわだかまるときがある 目覚めたときには、その文体を喪ってる なにやら寓意を持ってるらしい一行に歓び、メモ書きをするときには、その愉しみはもう消えてて いくら再現できても、メモ以上にはならない 頭上の天使が嘲るのを待たずにおれは行李にものをつめてヒッチハイクする 道は光りで舗装されたように陽差しのなかに進んでる おれは車に乗ってどこか東部の町をめざす 運転手は浅黒い女だったが、いつのまにかかの女はいない おれが車を運転してる どうしたことだろう 蛇のような膚をした夜が夜を喰い尽くそうとするのはなぜか 植物園がおれのうしろをとる おれはもうだめかも知れない 水色の行者たちが 枯れた花で 仔犬を打ちのめそうとする おれはそのひとりを捕まえていった おまえには襲撃された夢の文体が おれのなかで芽吹き、そして他者のなかへと去ってったのをどうして無視するんだって あるいは時間のはざまでぶらさがる不定形の夢たちが 王冠になって空から降って来ることを預言した 水のなかで破裂する空気 膨張する夢の骸がいま車を動かして、いうまでもなく、このおれを此処へおきざりにしたんだよ。