みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

短歌

世界樹の断面

* 青すだれゆれる窓さえ悲しげな男のなかのつよき妄執 夜釣りするひとかげやさし岸壁に魚〈いろくず〉たちの眼は光りたり 金魚一回転するまでのあいだにぼくのすべてを識ってください 基礎工事終わりつつあり炎天のコンパネならぶ地上を嘗める 蟹游ぶわれら…

海についての断章

* かなしみの歌を唄えり群衆の声あらずまた顔あらず 疾走する貨物列車の嘶きが馬のようだね/蜆を洗う 口腔にうずく虫歯か いつの日のメモ帖やぶる焦燥の果て むしろまだ生きてゐたのか青虫の最期のひとつ弾く指先 わるぢえの働くままに石を積む やさしき鬼…

間奏曲 04/23

* 毒花を捧げるのみか母の詩に添える辞をわれは持ちえず ひぐれまの悪魔のようだ ガス器具の異常警報鳴りやまぬなら 風をまねくひとのようだと誤解して電線工夫の仕草見つめる み空にてちる雲眺むときわずか生きるよすがもやがて失せゆく ためらいのなかに…

野菜幻想

* 夏の花おうまがときに咲き誇るパークサイドの街灯のなか まなざしの光りのおおく吸われゆく雨期の花咲くみどりの小径 うそがまだやさしい真昼 緊縛のバニーガールをひとり眺むる 歌碑を読む老人ひとり古帽のかげに呼ばれてやがて去るなり 十七音かぞえな…

父殺し [04/14]

詞書 此処に至っても、いまだ父を殺す夢を見てゐる * うつくしき仕事ありしか夏の日の父を殺せぬわが夢の果て ジャン・ギャバンの左眉かすめていま過ぎる急行のかげ 地球儀を西瓜のごとく切る真昼 夏に焦がれた蟻が群がる 老犬のような父あり土を掘るだれも…

ベルモンドの唇 [04/13]

* ながゆめのねむりもさめて梁あがる涙まじりの淡いため息 去るひとよものみな寂しかたときも放さなかつた希みもあらじ 意味論のむいみをわらう線引きの多き書物の手垢をなぞる 夏よ──ふたたび駈け抜けん未勝利レースきようも観るのみ 桃のごと手のひら朱む…

歌誌「帆(han)」2024 春《第3号》、刊行

www.seichoku.com 4/10より歌誌「帆(han)」2024 春《第3号》をだしました。本来の予定では去年の冬号としてだすことになっていましたが、執筆者の欠員などが重なった上、そもそものテーマ性の欠如、さらに原稿そのものの沈滞もあり、春に移行することにな…

鮪が赤い

* みささぎにかかる光りかおれたちの過去などまるでなかったみたい きみのゐる場所がわからずアンテナの不安ばかりがつのるゆうぐれ 青騎士のようだとおもう枯れ木すら戦へむかう馬のようだね かのときもおもいでならんゆうづきのかなたにわかれあるのみと…

星蝕詠嘆集/Eclipse Arioso【Second Edition】販売開始

'19年にだした処女歌集を再編集し、123ページに凝縮してリリースしました。よろしくお願いします。 www.seichoku.com 跋文より この歌集のオリジナルをだしてから、それを苦々しくおもっていた。あまりに自作について甘く、厳しさがないことをだ。今回、改訂…

鰯の顔

* 日干しする鰯の顔にぎらついたわれが映った両の眼の真昼 それは否 これも否かな ひとびとが遠く離れる夜中の気分 立ち昇る狼煙のごとく葬儀屋の建物がまた軒を閉じゐる 人間の家が心のなかになくきみのことばに滅ぶ祝祭 色が迸る 輪郭を突き破っては光り…

歌集『星蝕詠嘆集』改訂版

www.seichoku.com '19年にだした歌集を再編集して、出し直した。40ページ削って好い歌だけを残した。この歌集がどうなるのかはわからないが、非常によくできたとおもってる。前回のように『角川短歌』に紹介してもらいたいものだ。

バロウズの余白

www.youtube.com * バロウズの酔夢のうちに横たわるおれの余生のカットアップは 塒なく地上をわれの巣と見做す老夫もあらじ秋の地平よ かぎりなくヤヘクの夢を見るときのアジア革命ひとり眺むる 呼ぶ声もなくて寝床に眼を醒ますヘロイン切れの酔い覚めの寂…

かの女たちにはわからない

* 秋声のうちにおのれを閉じ込めてつぎのよるべの夜を占う 道を失う ひとの姿をした夜を突き飛ばしてまた朝が来る なぜだろう どうしてだろう わからない蟻の巣穴に零す砂糖よ みながみなわれを蔑して去ってゆくこの方程式の解とはなんぞ 旅を夢想する儚さ…

花とゆめコミックス

* 泣きそうな顔で見つめる 西陽にはきみの知らない情景がある 汗の染むシャツの襟ぐり 指でもてなぞるたえまない陽の光りのなかで きのうとはちがうひとだね きみがまた変身してる九月の終わり 涙顔するはきのうのきみのはず いてもたってもいられぬ孤独 探…

ラージサイズのペプシ

* くちびるの薄き女が立ちあがる空港行きのライナーのまえ 夏終わる金魚の群れの死するまで鰭濁るまで語る悲歌なし もしぼくがぼくでないならそれでよし住民票の写しを貰う 悲しみが澱むまでには乗るだろう17系統のバスはまだ来ず ひぐらしも聞えて来ないゆ…

予感

* 雲澱む雨の予感のなかにさえ慄いてゐる三輪車たち さよならといえば口まで苦くなる彼方のひとの呼び声はなし カリンバを弾く指もて愛撫するわが身のうちのきみの左手 ゆうづきの充ちる水桶ゆれながらわれを誘う午後の失意よ 手鏡を失う真夏・地下鉄の3番…

夏の間奏曲

* モリッシーのごと花束をふりまわせ夏盛りぬときの庵に 待つひともなくて広場に佇める地上のひとよわれも寂しい 蝶服記ひとり観るなり眼病のおもいでなどはわれになかれど ものもらいおもいにふける金色のゆうぐれなどはここにはあらじ いちじつの終わり来…

逆噴水

* 指で以て詩を確かめる未明にてレモンピールを浮かべたそらよ 夢のなかに愛しきものはありはせず河の流れが頭を伝う 荒れ地にて花を植えたり詩語などつつしみながら丘を下れり 待っている 果樹園にただ燈火が点るゆうべをおもい焦がれて 草萌ゆる夏の光り…

cabaret london

www.youtube.com * 毀れやすき殻のうちにて閉じこもる卵男のような少年 箒すら刑具おもわす蒼穹≪あおぞら≫に逆立つ藁の幾本を抜く 幻蝕のさなかの夜をおもいだすたとえば青いライトのなかで 街かたむきつつあり寝台のうえにおかれた上着が落ちる 菊よりも苦…

戦車現る

* 雷鳴のとどく場所まで駈けてゆく光りのなかの愉しい家族 駅じゅうにおなじ女が立ちふさぐ地上に愛のなきことに啼き 友だちがいるならいずれわが骨を拾わすといいてひとりの夏 隠さないで──きみのうちなるぼくがいう驟雨ののちの光りのなかで 夏またぎ 自…

樹皮濡れて

* 夜なべてほむらをかこむきみのためくべる夏の樹燃え落ちるまで すべての朝のためにできるのはきみのため息燃やすことのみ やがてまたぼくが終わろうとする夜に蝉のぬけがら一切を拒む なが夢のさなかに存ってわが咎をおもいだしたりさよなら人類 青嵐去っ…

八月のレパートリィ 

* 声ばかり此処にはありておきざりの敗馬眠れる夜のれいめい なおさらにきみをおもえばゆうぐれのおわりのいちごくちにつづめて 公園の見張り塔にて子供らの兵士たちかな銃声もなく たそがれに凋む風船・いくつかの断章ばかり果てて転がる アキレスの戦いば…

夏の嵐

www.youtube.com * 夏の嵐 かぜにまぎれて去るひとかげを追っていまだ正体もなく たれゆえに叫ばんか夏草の枯るるところまで歩めるわれは 浴槽が充ちる早さで夜が凪ぐ嵐のあとの傍白を聴け なにもかもが淡いよ夏のかげろうの辻をひとりで帰る足許 醒めかけ…

かげふみあそび

* タンポポの花が砕けてちる跡に城が建つかと見守る猫よ 老母はわれ捨て去りぬ七月の蛇に睨らまるかげふみあそび きら星もあめりか製か運命の時制誤う考古学かな 心臓の澱に漂う過去たちと揺るる午前の月が消えゆく 子供靴発見したり真夜中のサービスエリア…

両手にはなにもなくて

www.youtube.com * 訪れるわが世の終わり卑語にすらたじろがずにはおられぬ母よ 神学者警官妊婦酔っ払い黒一色の信号機たち 花にまみれ、なぜか悲しい横顔は朝顔市のなかの泥棒 ざくざくと剪らるる枝よ心地よく死ねる場所さえあればよし ひとが飛ぶ翅さえあ…

ささやかな願い

* かつてまだ清きわれなどありはせず水桶ひとつ枯れて立つのみ 大粒の汗ながれたりおもづらに不安が充ちる拳闘士かな 別離のほかに道などあらず静脈の畔に集う農夫のふたり うすらびのかなたにきこゆ声ならば耳をすまそう裁きのなかで けつまずく犬よ死人の…

輝きは祈りのなか

* 旅に酔うわれの頭蓋を飛びながら夏を知らせる雲の分裂 寂しさを指折りかぞえ駅まえの自販機のみに告げる憂愁 苦悩とは愚者の涙か森に立つ告白以前の影法師たち 雨がいう──おまえは隠者 かたわらに水を抱えて眠る仔牛よ わが魂の未明を照らす犀おれば祈り…

さみだれ

* 人間という病いは癒えず真夜中の修辞のひとついま見失う 雨季来たり帽子の比喩を探さんとするに紫陽花暗し 道わずか残して来たり夕月のもっとも高き空を見上ぐる わが過去の贖い終えていつの世か役目を終えて退場するか なにもかもさかりを過ぎて萎れゆく…

彷徨

* ゆかこというなまえとともに棄て去りぬわが青春の疵痕なども 木馬飛ぶ夢も醒めたり寝汗拭く長男ゆえのさみしさらしさ 花曇る街の静寂を駈けてゆく 罪や穢れのただなかにゐて 葉桜を手にとり給えきみの手でいずれ儚いわれの陥穽 ひとびとが河の姿で流れゆ…

歌誌『帆 han』第2号、オンデマンド先行販売

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