みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

歌集『星蝕詠嘆集』改訂版

www.seichoku.com '19年にだした歌集を再編集して、出し直した。40ページ削って好い歌だけを残した。この歌集がどうなるのかはわからないが、非常によくできたとおもってる。前回のように『角川短歌』に紹介してもらいたいものだ。

バロウズの余白

www.youtube.com * バロウズの酔夢のうちに横たわるおれの余生のカットアップは 塒なく地上をわれの巣と見做す老夫もあらじ秋の地平よ かぎりなくヤヘクの夢を見るときのアジア革命ひとり眺むる 呼ぶ声もなくて寝床に眼を醒ますヘロイン切れの酔い覚めの寂…

かの女たちにはわからない

* 秋声のうちにおのれを閉じ込めてつぎのよるべの夜を占う 道を失う ひとの姿をした夜を突き飛ばしてまた朝が来る なぜだろう どうしてだろう わからない蟻の巣穴に零す砂糖よ みながみなわれを蔑して去ってゆくこの方程式の解とはなんぞ 旅を夢想する儚さ…

倉庫街のタンゴ(2013)

ベルが耳をつん裂くようにけたたましく十秒ほど鳴って、止まる。 サミュエル・ベケット『しあわせな日々』 * 照明器具 入出庫作業 在庫整理 ピッキング 派遣からの正社員登用アリ──求人広告 * かれにとっていまいましい月曜日の、早い時間というのにもかか…

feelin' bad blues

www.youtube.com 田園のなかでブリッジミュートを鳴らしつづけていた男がふいにうごきをとめ、 河べに立ちながら永遠ともおもえる時のなかで鳥を眺めている かれが悲しみの澱みたいにおれには見える それはこの10年ものあいだ眠っていたおれのなかの慈愛みた…

花とゆめコミックス

* 泣きそうな顔で見つめる 西陽にはきみの知らない情景がある 汗の染むシャツの襟ぐり 指でもてなぞるたえまない陽の光りのなかで きのうとはちがうひとだね きみがまた変身してる九月の終わり 涙顔するはきのうのきみのはず いてもたってもいられぬ孤独 探…

夏のよるべ

かつて昭和記念公園でわたしは森忠明と歩いていた 夏のあじけない夜でしかなかった わたしは師匠と話しながら 東京都市の暑さのなかで これからの人生についてみじかい詩句をひねりだそうとしていた 先生はいった、──"帰らぬといえぬわが身の母捨記"って季語…

ぼくらが幽霊になるまで

捧げられたものと与えるものの区別がつかないままで、 ぼくは語って、きみは答えた、のはぜんぶがぜんぶ正解じゃないから なにものともつかない悪夢を乗せて亡霊がインターステイツを走る あかときのまぼろしみたいなかたちでもって説明書を読むとき、 セメ…

ラージサイズのペプシ

* くちびるの薄き女が立ちあがる空港行きのライナーのまえ 夏終わる金魚の群れの死するまで鰭濁るまで語る悲歌なし もしぼくがぼくでないならそれでよし住民票の写しを貰う 悲しみが澱むまでには乗るだろう17系統のバスはまだ来ず ひぐらしも聞えて来ないゆ…