みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

裸体の悪魔

 


 高架道路の歩道で、男がずっと火に焼かれてる 先週の金曜日からずっと火に焼かれてるのは、たぶん忘れられない痛みがあるからだ 雲雀のいない十二月 ふと拾いあげたものが聖痕だったからといって神になるわけにもいかないとき、じぶんの塒でだれかが写経用紙に小説を書くのは、はじめっからうそだったおれの出生や男の存在や、なまえなんかない猫たちの足跡のせいか 気づいたときにはもう手遅れで 男は叫びながら交差する車道のうえを飛びあがる 空を蹴る足は革につつまれて やがて逆さまになって死ぬ そして裸体の悪魔が君臨する 桶に水がないのに 麻の葉がふられ 弾かれた薬莢が手のひらに突き刺さる 悪魔はきみを裁きはしない 悪魔はずっと赦しつづける そして、だれもいないフロアで踊りながら つぎのステップについて考えをめぐらす やがてきみの膚を包むものがなくなったとき 悪魔はきみにかしずき そっと微笑みかけるんだ。