みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ヴィクトリア様式の古便所

* シャシンについて序章 * おれがまず手にとった父のカメラだった。それから小学6年生の修学旅行でトイ・カメラを買った。110フィルムを使用するやつだ。こいつで卒業記念に写真を撮りまくった。でも現像してみれば、ちゃんと写ってるものは数枚しかなく、…

習作

まだ病んでるつもりなのか きみはいつだってそうだ、そうやって労働放棄するんだ きみのかわりにだれが、 だれが見せしめにされるのかも気づかないで どうやってきみはある種の諦観、そして倦怠に踊る? いつまでもいつまでもぼくが見守ってるわけにもいかな…

I'm waiting for a man

ひどい週末だった、なにもかもを懐いだして、 かれはふいにモーゼルの照準を合わせる おもちゃの銃を弄び、なにかを忘れようとしても、それはあがきだ やがてかれがぼくに電話を掛けてくるという論証もないではない かれはいった、哲学は手段だと こうもいっ…

置き手紙

これだけのおもいを運んで来るのにかの女はさぞ大変だったろう 廚の火が消えてひなぎくが一輪ざしにされてしまったから ぼくはどう応えたらいいのかもわからないまんまで かの女のなかにいる、もうひとりのかの女の声を聴く ぼくはかの女の手をとって荒れ地…

豚(2017)

おれの人間性? かれらの人間性? あるいはかの女らの人間性がベーコンみたいにわるい臭いを放つ 動物農場〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫) 作者: ジョージ・オーウェル,水戸部功,山形浩生 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/01/07 メディア: 文庫 この商…

パンケーキの墓(初稿/2011)

* 森からぬけでる。するとぼくらはいつも腹をすかし、手持ちはまるでなかった。ちいさなさまよいを味わい、土埃をまきあげる。それは雨の日であってもおろそかにしない。廃屋のなかや水のない涸れた貯水槽のうえでたびたび誓ったことだった。ぼくらは未踏の…

ソクラテスというポン引き〈'18/nov〉

* ホチーチェルイバってなんのことかな──ブローティガン「ディキンソンのロシア語」 * リュックもギターも奪われた。トートだけ持ってわたしは男の室からでてきた。恐怖とともに。財布と電話はある。そいつはいった、おれから逃げるなら荷物は渡さない!──…

犬を裁け〈'18/oct〉

* おれたち、淡い夢のように糞をたれ齢をとっていくか!──中上哲夫「旅へ!」 * 7月12日 固茹で卵を3つ喰う。パプリカをまぶして。午前はずっとひとりでリハーサル。今回、ビザールを持っていくことにした。いつものチューニング。画材を鞄につめる。大阪…

雨季のエロイカ《今月の歌篇》

* 雨に煙れる町のむこうがわで一握りの石を拾いあげるきみへ 時折ぬかるんだ道に足をとられてきみを愛おしくおもう夕べ まやかしのこととおもえば少しは気が楽か英雄不在の失意のなかで あじさいがゆれるゆれるまたゆれてやさしさなどをあざけりゆれる 光り…

no love, no love

ビール、ベビーチーズ どうしようもなくゆうぐれて見えなくなってしまった もはや、ちがうなにかでしかないぼくの魂しい いるはずのないひとびとをおもい、 起こり得ないことをおもうとき、 翅のつけ根から、 激しく傷む どうせきみたちはもう遠くへいってし…

Louie Louie

夏の匂いがする、──ぼくはつぶやく かの女たちにできることはもうなにもない、──ぼくはやぼやく 母は家をでたらしい、 姉は離婚したらしい、 妹たちはそれぞれどっかで暮らしてる かの女たちがどこにいるのかなんかぼくの知ったことじゃない あの家のなかで…

piss out

できればもう少しでいいからましなものをと求め、 なにも手に入れられないことの憐れさ だれもでもない、 なにものでもないという事実、 受け入れようと受け入れまいとそれはおなじこと だってきょうも郵便受けはからっぽで だってきょうもあしたの喰い扶持…

叶えられない祈りのなか、ぼくはぼくの指を握ります

地下鉄 水に充たされた花野であしたの仕事がないという事実を呑む なんてこともなくダートを走り抜く馬みたいな勢いが要る だのに空気の抜けたダッチワイフみたいにおれは存る たまたま掴んだ書物と、たまたま掴んだ絵筆が、 しつこくおれを狙ってる、 どう…

ふたつのけつに降りた蠅

電話 レイの母親としばらく話をしたのはもう5日もまえだ やつはまだおれをうらんでるだろうかとおもう でも、どうだっていいこと やつもおれもろくなもんじゃないから ふたつのけつに悲しい蠅がとまって あじさいがゆれる、またゆれる その振れ幅にしぶく、 …

だって、もう、だから、(PM20:59)

夜ふけの通りをわたってすぐに 光りのきれっぱしが飛んで ぼくに迫る ブレーキ、 焦げるタイヤの臭い、 むかってきたのは40女の乗ったルノー 醜い皺をいくつもつくりながら かの女は窓からかいなを突きあげて 怒り声をあげる それはまったくの瞬間でしかなく…

6月

哀傷というのか、輪郭というのか、とにかくそんなものに搦まれて、 おれは身うごきできなく、なってしまってる 電話帳の最後に記された番号と、 いずれだれもかれもがいなくなるという事実 遠くまでひろがる溝の澱でいま 6月が燃えあがる そして医者がいう ─…