2020-01-01から1年間の記事一覧
* 夏の陽ざかりのなか、南瓜の梱包と荷積みが終わって、みんなが苺や林檎の検品と袋詰めに狩りだされた。寒いくらいに冷房の効いた上組という会社の倉庫のなか、おれは午後の作業が始まるまでを待っていた。こういった単調な労働ばかりしていた。腰を入れて…
* ひざかりの天使たちかな唇を咬んでいまこそおわり来りぬ 一行の詩にさえひとが死ぬときの潮騒ばかり倖せな使徒 神隠しカミの櫓の梯子すら見喪ってる大人の悲鳴 まどろみの昼顔ひとつうらめしや少年暗黒合唱団来ぬ 戯けなどにまみれて暮らす裏町に置き去ら…
* なまぐさき死せし魚を売る店も鱗のなかに紛れん夜よ アキアカネ暁に遇い新しき季節のあいま飛べばあやかし 入り口と出口でがともに繋がるる輪廻のなかの永遠の秋 立樹わる木々のなかにて眠るものみな伐られては竈火となり 遠い夜――火事の報せを聴きながら…
指を、 むすんで、 膝を、 ひらいて、 まだ足りないと、 いやいやをする子供ら 頭のうえにつくった輪っかに 映像がひらく 神になれなかったもののために、 洗礼盤をうち毀すひとり農夫 (わたしは手斧にいったんだ、おまえにできるのはそれだけのことと) そ…
* 午後12時、現在国道2号線はO公園の付近でバイクの単独事故が発生しました。負傷者は病院に搬送されたものの、意識はあり、右足首の骨折のみ。道路はすみやかに規制が解かれ、交通渋滞などの問題はありません。午後15時半、N交差点、西側にて自転車同士の…
* をとこは山百合、をんなは雛菊、そして汲みあげられた水根の表皮に現れたおまえこそ、おれのもっとも欲しいもの かりそめの棲み家にからたちの花 すべての花束が色を失って砕かれる おまえの心を砕くように砕く 夜もすがら石に触れながらも、石になりたい…
あたらしいふたつの作品をオンデマンドにて先行販売はします。以下のリンクから注文ページにいけます。どうぞ御高覧ください。 * 写真集「no tittle (無題) / Photographs by Mitzho Nakata ; 2002-2019」 ¥1700 www.seichoku.com チャップブック詩集「そ…
* 09/01 12時過ぎて起きる。データ作成、入稿、どれも終わった。それから髭を剃って、湯浴み。あがって塵だし。きょう投稿する予定の日記を整理してたら、もう3時まえだ。薬はとっくに嚥んでた。眠る。朝8時きっかりに起きて、支度。外出して公共料金を払う…
またも過古の曲をリメイクしました。歌詞はまったくちがうものになりました。歌のほうはじぶんの曲なのに上手く歌えず、近々、ボイストレーニングに通うつもりです。 CQB [re:make] / 中田満帆 「CQB」capo=1F FM7 Csas4 CM7-9 Am7 FM7 C9/13 涙が 枯れて夜…
* 猟銃の発射音が聞えた。北野の高台のほうからだった。たしかに聞えたはずだのに、だれも110番に電話をしないようだった。とはいえ、おれもしなかった。猪でも撃ったのかも知れない。時間は10時半、すっかり明るくなった陽差しのなかで、おれは窓をあけ、…
1984年のピープ・ショウ / 中田満帆 「1984年のピープ・ショウ」capo=1f Dadd9 E7sus4 Dadd9 E7sus4 Gadd9 あたらしい車で ひなびた町走る 幽かな おもかげ 求めてさまよう Dadd9 E7sus4 Dadd9 E7sus4 Gadd9 かつてのいまごろは戯れ暮らしてた かの女のなに…
ふゆぞらに天女来たりぬ督促状 眉痩せる少女の靴がぬめりたり 死せる繭生まれるまえに罰せられ 狐飛ぶ夢見たるや地平線 妬心もてふりむくことの無粋かな 向日葵やせんずり掻いて濁りたり こんぺいとう世界の充ちる音聴く 茜差す世界婦人は臍を嚼む 狂犬病予…
* ロバート・フロストに目をやりながらも、湊谷夢吉の唄を聴きながらも、森夫は退屈し切っていた。やれることがあまりない、ほとんどない。手の施しようのない人生を冬が横切っていく。表の公園は静かで、たぶんだれもいない。アパートの3階からはラブ・ホ…
* たまらなくなって、おれは懐いだす、朝の早い時間を走る軽トラックの車窓、回収量の進歩を褒めてくれた業者の男、新聞紙と一緒にビールを何本もくれた、両手のない老人、おれにやさしく、身の振りを案じてくれた禿げ頭の老人、作業中に見つけた、ひとりの…
来年、1月より新作を出版します。チャップブック詩集「それはまるで毛布のなかの両手みたいで/詩群2019」、画集「"gone" mitzho nakata / paintings works : 2003-2019」です。ネット及び委託販売で限定的にだす予定です。よろしくお願いします。 予価は¥8…
遊具走るひざかりのなかで子らに取り残されながら 貨車眠る過ぎるあまたの夢々を並べ替えては棄てる戯れ 帰宅せるわがアパートの排水をいま流れゆく空蝉たちは 素粒子に分解されて悲しめど生誕以前の神の業なし 他者の比喩ばかりがまかるガード下少女のひと…
* 散水機が回転しながら水を撒き、青い芝のうえに曲線を描きつづけている。真昼のこの町もすっかり秋になった。母さん、聞えますか?――いままさにむかいの犬が吠え、やがて交尾の喘ぎが聞えて来ます。あなたがぼくの犬を棄てにいった夜、あなたの眼ン玉めが…
* 《気づくと、おれは腹を押さえながら傘を差して、元町は、裏通りのガード下まで歩いてた。雨が激しかった。血はそれほどでてない。いまならまだ助かるというのにそこらで酒を呑み、最期に残ってる薬を3つもキメる。たまらない陶酔感と、刺激臭、そしてじ…
* のらりくらりと中指を突き立てながら、その男はおれの標的となるべく、ポーカーテーブルの端っこから、こっちにむかって右手のナイフをふりあげた。けれども生憎のところ、おれのほうが早く、やつの右手を蹴りあげて、やつが壁に背中を預けた一瞬、腹にフ…
* むかしの夢日記を整理しながら、酒を呑んでた。きょうは土曜日。いつもの通り、7番から9番までのレースをAーPATで買った。単勝を1点、複勝を2点買って、なんとか凌いだものだ。勝率は大したことない。おれはビギナーだったし、競馬についての知識すら、1冊…
しらたきのように両手をすり抜けるきのうのような経験があって、 ゆくえなど知らぬふりしてものはみな遠のくばかり秋のはじまり 両足を放りだしては炎天のむこうの街のまぼろしばかり やがて灰となるすべての愛をムンクに添えて歩くゆうぐれ 貨車眠る夜のほ…
山河ゆく背嚢ひとりたずさえて故国の春に咲かんとす 花薺みどりの恐怖訪れてわれを招くは青い戦車か 失える鍵よみずから沈みゆくさらば春の日――葉桜並木 サンドバッグが死体のように横たわるボクサー地獄のほとりの水よ ソーダ水弾けてひとり地にかけりわれ…
わたしが主宰する出版局「a missing person's press」の出版物を紹介します。今週末の文学フリマ大阪でも販売する予定です。 ampp-001 38wの紙片 ×絶版ampp-002 for MISSING/The magazine Vol.01 ×絶版ampp-003 38wの紙片[second edition] ISBN978-4-990950…
'02年から去年までの作品を収めた、写真集を秋にだします。10、11月を予定してます。50部限定です。内容は45ページ。縦組みです。ほんとうは横組みでだしたかったのですが、製本直送では横綴じは受けつけていないので、それに従いました。機材は、smena08、,…
* きみがまだ耳清らかなる少年のときをおなじくわれはさまよう 敵は遠くおれのなかから死者たちが戦場へゆく永久のごとくに 汗しぶく春の真午の運動よまだ若き青年のくるぶしを待つ 午后過ぎてに妬心のままに暮れなずむぼくの心臓だれに見せよう 春畑の深き…
08/01 深夜3時を過ぎて床に就く。12時50分に起きる。燕麦。日記をブログとnoteに投稿。東映特撮動画を観る。きょうはギターの練習はしなかった。間食に鯖缶。夕餉にフジッリ。ほとんどなにもしなかった。ブログで3人が読み、noteで7人が読んだ。ただソレダケ…
* たったいま、聖なる睾丸を露出したまま、おれはモニターのまえでものを書く。最近はずっと映画と作劇の指南書を眺め、じぶんの至らなさをおもい知るだけだ。きのうは映画「絞殺」を観た。開成高校生殺人事件をネタにした新藤兼人作品だった。乙羽信子と西…
列車を降りてしばらく、かれはあたりを見渡してその味気のなさを噛みしめる。なんだってこんなところにとおもい、さらにはここしかないという気にもなった。やがて事務所兼寮にたどり着いて、ドアをあけた。机のむこうの中年の小男が立ちあがって、かれに握…
* じぶんの人生の私家版をとっくのむかしに書きあげてしまった。育成歴、学歴、職歴、犯罪歴、なんでもござれだった。でも、その本はまったく売れなくて、今度の文学イベントにもたずか2冊だけ、タダで配るつもりだった。原価がかかり過ぎた。うぬぼれが過…
環状線に乗って、じっくりと街を眺めた。そのとき、なんとなく覘いたタイムラインに頭のない女の死体を写したものがあった。頭のほかはちゃんと服を着てて、それまで生きた人物だということがわかる。どっかの地方の事件を研究した、発禁本のページらしかっ…