みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

愛を巡る最後の伝言

もしもきみが牛なら、 ぼくを愛するだろうか? もしもきみが鹿なら、 ぼくを愛するだろうか? もしもきみが鯨なら、 ぼくを愛するだろうか? もしもきみが蛭なら、 ぼくを愛するだろうか? もしもきみが発動機なら? おなじことだ。 きみは愛さない。

公営プール

飛びあがる水、 飛沫に 反射する光り 陽光の種子みたいに あるいはきみのせいかも知れない マッチを擦って時間をつぶす のは淋しくて、 青いおまえの悲しみ ウエイトトレーニングをやる おもに腹筋を 時間と死は均衡を保つから いつまでも終わらない マチス…

日本式の朝食

鳶色のスーパーマーケットで 20%引きの鶏肉を仕入れ 緑色の窓に忍び込む たとえばそんなふうにして詩を書きたい なぜかどうかはよくわからない 白と枝を足して、 ウィスキーを導きだすには どんな方程式が必要だろうか もはや正常さを呪うことしかできない …

かつての友人たち

windows 7 を10にアップデートできなかった あまりにもデータの空白がなさ過ぎたんだ それにどうせぼくなら型落ちのmacを買って SSDに換装にするから、 しばらくとか大丈夫って おもってるよ こんなことを考えて意味と意味との繋がりや、 空白についておもう…

青い種子は太陽のなかにある──ジュリアン・ソレル

ほとんど同時に何件もの求人に応募して蛸足状態だった。おとついになって家電量販店での仕事が決まったものの、週払いは原則やってないという。はじめの1ヶ月のみ、申請ができるが、その手順がややこしい。日曜日、月曜日と勤務はするものの、ほかの案件に手…

スケッチ(01)

遠くはなれたところで芽吹くものは石 石になりたいとおもう、 でも、おもうだけですと佐々木英明はいった 種子はみな石となり、壁となり、町となるのは、 あなたがきのう土を産んだせいだといえるのは、 黄色い花のあるところで鼡の人間が栄えているからか …

愛について

愛について書けることはそう多くない 愛について話せることも多くない なにかもかもが河のむこう岸へいってしまったみたいに 愛はとどかないものだとこの人生に教えられてきたから、 いまさらどうればいいのかがわからない いままで好きだった4人の女たち い…

求職

仕事がない 金は減る このおれにふさわしい仕事を とこしえにつづく仕事を 才能の裏づけもなく詩を書き、 そしてギターを鳴らす そいつには厭きた 週払いの利く仕事が欲しい きょうは家電量販店で 仕分けの面接 でも、週払いは原則なしと来る 求人広告は当て…

wolf moon

月翳にまぎれて 見えなくなった友人を探しに 舟を漕ぐ 生田川上流から下ると、 二宮神社にぶつかり、 もうなにもわからない 冬ざくらが咲いてたあたりで 処女塚を過ぎて、 やがてぼくのなかの熾きにたどり着く のはほんとうだろうか だれかが剪った、茎の断…

映像についてのメモ

たとえば最初の光りの切れっ端が 丘のむこうに落ちて 弾けるとき おれはきみのことなんか忘れて マスキング液をフォルクスワーゲンに塗ってる だれかがおれのことをとやかくいうことはない いまではみんなおれを観ない 映画みたいに ラジオみたいに ただ一方…

real gone

ひとたび花に臥す すれば自身の姿さえも 見えなくなる ほんとうになくなった 遠路の果てで じぶんを見失う男 かつてはなまえがあったはずの、男 ほら、プールサイドを歩いて、 他者たちのかげを数えてるやつがいる もしできるのなら、 そいつを突き落とした…

Nastassja Kinski

身うごきのとれない暗がりで みずからを律するのは わるあがき に 過ぎない ほとんどのひとが雨になったあとで 林檎の表皮を削るような かぜが吹き抜ける 声をあげて いまだ顔となまえが一致しない労務者たち カナリアの鳴き声がやんで ガス・スタンドから 2…

夢の定着液

蟻塚によじ登る夢を見た じぶんがアリクイになった夢 過古からやってきてはやがて現在へと定着する夢 落ちてきた不運をみなスクリプトしつづける夢 ぜんぶがじぶんの不始末からはじまってる それが夢のなかの、 あらゆる穴に符号する、 ゆるい神経痛だ 「ダ…

Romantic Discharger

花に石を足して 鱈をかけて 無花果で 割る その答えは暗渠 信号は右 答えは真許 信号は右 ロータリーに呼ばれ、 細胞に阻まれ、 金木犀が、 足場の、 むこうで、 建築する。 二人称のなかにまだきみがいるなら、 花をふりまわして、きみを打擲したい 打ちす…

新年の眼

もはや愛しみもない ところで、 立っている わけにもいかず、 歩く そいつは、 転落の、 技法ですら ない 声のないほうまでずっと、 ずっと進みつづける のは亡霊の、 流儀か ボルネオが呼び、 神戸が答える までもなく、 道は 冷たい 空き地の盛り土を眺め…

Bald Mountain

ジム・モリスンの「HWY」を観た ヒッチハイカーが車を乗っ取って、 夜のモーテルへたどり着く それだけの映画を 運転手の、 不在が、 意味と手を繋ぐことも 赦さない ショットも、フレームも、 競艇用ボートですら、 いまはアメリカという夢の隠語 為す術も…

茫洋

名づけられない ものに惹かれ、 るが そうなりたいとはおもえない くちびるから オレンジがめくれあがって、 わずかな熱量から 水上が 沸き立つ のに 麦には国がない ホテルの便所を占拠したい 分光器の子供たち あるいは大礼服の老人たちから奪って、 テレ…

宛名のない書簡

謹啓 魂が 衰えたとき 形式が 現れる──チャールズ・ブコウスキー「芸術」 年賀状、ありがとう。すごく励みになった。どっかにきみの本名を書いてしまったみたいで大変すまない。校正がちゃんとできてない。箇所を教えてくれれば訂正するよ。わたしはプロとは…

新年の手紙(Ⅱ)

きみに手紙を書こうとおもいながら、いったい幾年が過ぎたやら ぼくは病院と留置場と裁判所をいきつもどりつして、 すっかりくたびれてしまった ぼくはぼくがなにものかになることを待ってて、 待ちすぎてとても疲れてしまったんだよ 曳航のしすぎで、あらゆ…

新年の手紙(Ⅰ)

* パーティはなかった 雨季の名残りがあらゆるところに点在しては、早くもぼくを蚕食しようとかまえる 自動車を比喩にして逃げ穴に変換するスペース・キーが壊れてるのにだれかが、 かれらを、そしてかの女らを掴まえる 河に飛び込むツェランへの最後の督促…