みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

 

 たとえば赤いダウンパーカーのように眼のなかに入ってくるものたちが
 たとえば青いシグナル・ライトに反射して逃げ去ってゆくものたちが
 熾きのなかで吼え、そして口ごもる
 ことばのなかで吃る意志、そして浸透する汗
 薄い胸筋のなかでくり返される過古の一場面すら、
 なにかとても大事なことようにおもえてしまう
 きみが黙って席をあとにしたことや、
 かれがいなくなったあとで取り残された机のこと、
 かの女がいった、永遠のようなひとりごとたち
 それからいつまでも小さかったぼくの背中が
 真夜中に巨きくなってしまう夢やなんか

 ぼくは呼びかける、遠ざかるものたちへ
 ぼくは呼びかける、かたわらにいないものたちへ
 それは意味を喪った郷愁のつらなり
 それは介意を喪ったうらぎりの季節
 ゆきちがう犬たちを
 どうしたものか、
 ぼくは笑うことができない