みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

方言詩の試み

   *

 秋のむくろをあつめてきて、
 根菜やズッキーニと寄せ、
 酢漬けにして、
 食べたい
 酒のあてにはちょうどいいだろう
 たぶん階段を踏み外したとき、
 (手のむこうには溝があって、
  ひとが歩いてはるから
  なんや気持ちが
  わるいんや)

 壜の酢漬けを抱いて、
 半端な愛につつまれた子供たちが
 ただしさにつつかれていま、
 どうにか倖せなふりをつづけようとしてる
 でも、少女たちはふいに正直になる
 (なんでやろ?)
 演技をやめ、ほんとうに感じることと、
 ほんとうに感じたくないことに爆発する
 天使の切り字みたいに

 好きなだけ毀れてくださいと
 黄色い点字ブロックのむこうからいわれた
 (おばはん なに見とんねん)
 いまだに故郷の訛りを使えない
 じぶんがだれのなのかをいつも添乗員に尋ねてる
 (めぇわくちゃうん?)
 買いものカートの群れのなかで
 品切れになれないじぶんが
 ふいに買われてしまったとき
 どうしたか懐いだしてしまった
 夏の果樹園で映画を喪ったこと、
 それをつぐなうために唇を切って、
 肩を抱いたこととか
 (なんか、知らんけど
  かの女のことが知りたいから、
  かの女の背中ばかり見てたんや)
 
   *