みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

師弟記念(森忠明からの葉書)

 

 新作拝見。『タンゴ』、『黄昏』に名歌多し。「世界一のペシミストシオランが、パリの銀行で貯金通帳をのぞいている自分を心底おぞましく感じているような、まっ正直な歌が三つ四つあって面白かった。ただ「散文」や「詩」にいつまでたっても、順三郎のいう「俳や尾籠の美」があらわれないのがつまらない。七十余年、美女たちに食わせてもらう、ウルトラ・パラサイトをデュシャンばりに『芸術』にしてきた俺とはちがい、この「この不気味で不安な世界」(ハイデカー)や頽落したクソタワケどもに、もまれてきた男に、それを望むのは酷か。そもそも、35歳なんていうチョンチョコピイ歴史や、今ちやほやされている新人へ、必要の無い気を回しているらしいことも気にいらない。俺がおまえの時分に、なんとか賞なんかもらってハシャイでた奴はみんな消えちまってる。きのうあしたの「評価」より、俺のように53年目にして「レガシー」になるべきだろう。本来、神戸マフィアのボスになれるくらいの、真の度胸があるおまえだ。気長にしぶとく生きてくれ。

 P.S 貴君の「ブログ」とやらに、この文章を「師弟記念」として、全部精確に転載してもらいたいな。
 2020 11/3
 森 忠明