みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

2022-01-01から1年間の記事一覧

汽笛もしない昼

www.youtube.com 08/01 金が入る。朝起きてコンビニで買い食い。寝る。三宮へ。各種支払い。役所へ。賃貸更新料の領収書を提出。収入申告。終わって一旦帰る。それから業務スーパーで買いだし。 08/02 歌誌が届く。発送のために郵便局へ。KOHYOでハマチの短…

だれもいなかった夏 [’22/jun-jul]

www.youtube.com 06/01 酒を呑む。悪酔いして10時に起きる。まだ眠い。森寺内科へ。ジクロフェナクをボルタレンに変えてもらう。蕎麦を買う。帰って業務スーパーに電話。鶏胸肉と本格オートミールを取り置き。酎ハイを呑む。 06/02 記憶がない。カーテンを剥…

仮面ライダーBlack Sunと悪についての考察(23/03加筆)

www.youtube.com * 安倍元首相の狙撃が起きてから、『仮面ライダーBLACK SUN』が配信された。監督は白石和彌。わたしはかれの作品を『凶悪』しか観ていない。たまたま題材との相性がよかったのか、原作がよかったのか、なかなかの作品におもえた。いっぽう…

化石の時代

* 愛されてゐしやとおもう牧羊の眼のひとついま裏返る 流されて種子の絶滅見送れば秋の色さえ透き通るかな 足許を漂う季節いつかまた看板ひとつ降ろされてゐる 涙とは海の暗喩か岩場にて蟹の死骸を見つむる午後よ さらばさらばよ石くれの硬さをおもうわれの…

ビートルジュースの喇叭呑み

www.youtube.com * おもえばあのときはひどく酔っていた。──もちろん、そんなことはいいわけにならない。──けれども道中ずっと呑んでいたのはたしかだった。──おれは過去から逃れようとする一匹の鼡でしかない。──そしてかの女は遠くの土地で、きっとおれを…

フットサルの現象学

www.youtube.com * バー・ロウライフでの勤務時間は17時から24時だった。バーテン見習いとして年末から雇われ、凄まじい勢いで客をさばいた。仕事はきつかったが、物流倉庫のきつさとはちがい、多くの刺激があった。12月は客で溢れかえった店のなかを右へ左…

母子手帳

* ゆうぞらへかえすことばもなかりかな一羽の鳥を放ちたるなら 母が逝くそらのひろさももろくありとりかえしなどつかない彼方 そしてまだ父まだ生きぬトーチカの暗き焔はやがて尽きぬる 知らずにておけばよいとぞおいぬる父母の家庭も姉妹の過去も 涙とて母…

過去と現実

www.youtube.com * おれはかの女の、懐かしい歌声を聴く。BONNIE PINKの「過去と現実」だ。冷たい声が室に閃く。ここは'22年のこの神戸で、おれは過去に書いたいくつかの掌篇小説に眼をやっていた。なにもかもがだめだった。きのうは無呼吸症に悩まされ、そ…

ペーパー・ナイフの冒険

* 春の昼下がりのことだ。通学路で突然にいわれたんだ、あのくそ学校のやつらから。理由なんかわからない。たぶん、おれそのもののが珍しかったんだろう。いつもおれは標的になってた。 おまえ、キッショいねん。 なんでおまえみたいのがおるねん? はよぅ…

息が止む

www.youtube.com * ゆかしめよ時のはざまにそよぎつつ眠れぬ夜を戦う花と わがための夢にはあらじ秋口の河を流れる妬心の一語 男歌かぞえる指に陽が刺さるゆうぐれどきのあこがれのなか けだしひとはうつろいながらうろ叩くやがて来たりぬ夢の涯まで つかの…

ゆれる潮

www.youtube.com * 刈りがたしおもいもありぬ秋来る颱風過ぎてすがしい原っぱ みずいろの兎が跳ねる 妬心とはまだ見ぬきみにたじろぐ時間 神さまがくれたクレヨンなどといいぼくを欺く女学生たち 波たゆるいつかの秋がぎらぎらと迫り来るなり男の内部 姿鏡…

無題

* 子羊のような贄欲す朝ならばわれを吊るせと叫ぶ兄たち 踏み切りに光りが滅ぶ列車来て遮られてしまうすべてが かつてまだ恋を知らないときにただもどりたいとはいえぬ残暑がつづく 会わずして十年経ちしいもうとの貌など忘るつかのまの夢 よるべなどなくて…

系図

* 水匂う両手のなかの海さえも漣打ってやがて涸れゆく まだきみを怒らせてゐるぼくだから夏鈴のひとつ土に葬る もはや兄ですら弟ですらないぼくが父母ない街ひとつを愛す 生きるかぎりに於いてもはや交わさぬ契りを棄てる いまはもうだめにしてくれ丸太積む…

九月になったのに

www.youtube.com * 来るたびにきみを眩しむ秋の陽の干割れた壁をひとり匿う 祖母死せり灸の痕を撫でながらわが指のさみしさおもう わらべらの声掻き消され一瞬の夏休みすらいまはむなしく 駅舎にてまぎれて叫ぶ男ありわれと重なる九月来たりて 上映せり夏の…

9月の海はクラゲの海

www.youtube.com www.youtube.com * もはや、9月である。最近、ほとんど本を読んでない。7月に買ったライオネル・ホワイト「気狂いピエロ」も数ページ捲っただけだ。というわけで今月は森山大道のフォトエッセイ、「遠野物語」しか買わなかった。本棚はいっ…

サヨナラ、8月、また来て9月

www.youtube.com * 正直、今月は碌なもんじゃなかった。7月中、断酒と節約が上手くいっていたせいか、歌誌が上手くできたせいか、その反動で飲酒に奔り、浪費に奔ってしまったのだ。当然、離脱症状もひどかったし、原因不明の体調不良にも悩まされた。耳だ…

まちがい

過去を走り去った自動車が、やがて現在へと至る道 それを眺めながら、ぼくは冬を待つ ぼくはかつて寂しかったようにいまも寂しい こんなにもあふれそうなおもいのなかで、 きみのいない街を始終徘徊してるのさ これまでの災禍、そして怒り なにもかもが一切…

夢のスケッチ〈Pt.01〉

かれは衣装入れに手を突っ込んでなにかを探している それは去年のセータかも知れないし、水色の恋かも知れない 台所では子供たちがきのうの誕生会を回想している もしかしたら、ケーキが少なすぎたのかも知れないな そうかぼやいてなにかを探している でも、…

もしかするといなくなったのはぼくか

* 清らかな家政学科よ乙女らの制服少し汚れてゐたり 史を読むひとりがおりぬ図書館の尤も暗い廊下を走る 国燃ゆるニュース静かに流れたり受付台のうえの画面よ たゆたえば死すらもやさしみながみな健やかにさえおもえる夜は 送り火をかぞえる夜よ魂しいが焔…

世界が夏になったとき

* みずからの両手を捧ぐあえかなる南空のむこうガラスがわれる 夏跨ぐ句跨ぎ暑し森閑のなかを歩みて望む才覚 ひとがみな偉くおもえて室に立つ水一杯のコップを握る 彼方より星降る夜よバス停に天使のひとり堕落してゐる 夏しぐれ掴みそこねた手のひらを求め…

野焼き

* そしてまた去りゆくひとりかたわらに野良すらおらず藪を抜けたり 夕やみにとける仕草よわれらいま互いの腕を掴みそこねる 世はなべて悲しい光り笑みながらやがて散りゆく野辺送りかな 野焼きする意識の流れしたためる夏の化身の夜の呼び声 流れすら朝のま…

アマガミ

* たそがれに語ることなしあしたには忘れてしまう空気の色も 波踊る 真午の月のおもかげがわずかに残る水のしぶきよ 砂のような日常つづく意味のない標語の幾多ならぶ路上よ 友なくば花を植わえというきみのまなこのなかにわれはあらずや 星の降る夜はあり…

眼をひらいて祈るように

* 願いには意味などなくて立ち止まる駐輪場が増設された 水運ぶ人夫のひとりすれちがう道路改修工事の真午 からす飛ぶみながちがった顔をして歩道橋にて立ちどまるなり 眼をひらく祈りの対義求めても高架下には車止めのみ アカシアの花のなかにて眠るとき人…

歌誌『帆(han)』、初号発行

装丁 わたしくし中田満帆主宰による歌誌『帆』第一号。17人よる短歌と批評を収録。反時代的祝祭を彩る、あらたな短歌表現を結集した一冊。序文より《わたしがいま望むのは胸が痛くなるほどに詠み手の内奥が剥きだしになった歌、孤立を超えてゆく愉楽を伴った…

街色

* 鶫すら遠ざかるなりかげはみな冷たい頬に聖痕残す 悲しけれ河を漂う夢にすら游びあらずや陽はかげりたる 寂しかれゆうべの鍋を眺めやる もしや失くせし望みあるかと ぼくを裁く砂漠地帯の官吏らがミートボールに洗礼をす うつし身の存り方おもう紅あずま…

と、おもう。 

* 懐かしきわが家の枇杷よ伐られつつ繁る青葉をいまだ忘れじ 子供らに示す麦穂の明るさはたとえば金の皮衣なり 遠ざかるおもかげばかり胸を掻く溢れんばかり漆の汁よ かなたなる蛮声いつか聞ゆるにわれの野性が眼醒めたりゆく きみがいい きみがきみである…

林檎のかけら

* 七夕の光りもわずかちりぢりに地上の愛を手放すふたり ベゴニアの苗木がゆれる 風の日に陽当たりながらわれを慰む だれかしら心喪うものがゐて舟一艘に眠りてわれ待つ ゆうぐれの並木通りに愛を待つ わずかなりたることばのすえに 天使降りる土地の主人を…

茱萸のおもいで

* 招き入るひともあらじや光り充ちさみしさばかり夏の庭にて シトロンの跳ねる真昼よ世に倦みていまだ知らないかの女の笑顔 草笛も吹けぬままにて老いゆけば地平に愛はひとつもあらじ 告げるべきおもいもなくて火に焚べる童貞の日の詩篇や恋を 熱帯魚泳ぐ夏…

青林檎

* 水無月のつるべ落としを眺めやる一羽の鳥のような憐れみ 地の糧もなくて窮するひとりのみ草掻き分けて見知らぬ土地へ やがて知る花のなまえを葬ればとりわけ夜が明るくなりぬ ふりむきざまにきみをなぐさむ窓さえも光り失う午後の憧憬 たとえれば葡萄の果…

38回転/酔い醒めの朝

* といわけで38になっちまった。もう逃げられない。歌誌の発刊は迫ってるし、今年中にはアルバムのレコーディングだってある。おれはとりあえず、なにかもを赦そうとおもった。過去のじぶんや、過去のものごとをぜんぶ。だって、もう取り返しがつかないし、…