みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

九月になったのに


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 来るたびにきみを眩しむ秋の陽の干割れた壁をひとり匿う


 祖母死せり灸の痕を撫でながらわが指のさみしさおもう


 わらべらの声掻き消され一瞬の夏休みすらいまはむなしく


 駅舎にてまぎれて叫ぶ男ありわれと重なる九月来たりて


 上映せり夏の黄昏まざまざと復讐さるるわれの残像


 真昼どき夢の頭上を飛ぶ姉のまぎれなくある二度の婚姻


 いちまいの夏衣を脱げり初秋にてみなが脱皮を遂げるごとくに


 〈季節よ 城よ〉ランボーの詩句をつぶやく燕麦を煮る


 手のひらに雲をかざして立ちすくむ映画のなかにだれもいなくば


 窓に立つレインコートよ秋霖の夜をさまようわれの模造か


 たったひとつの夜を阻まれうろたえるわれは膣内射精障碍なり


 信号が変わる瞬間 ふりかえるだれもいないという妄想あって


 かまきりの死骸を見つけふとおもう死にふさわしき土地などあらず


 散水機涙のように水垂らす心あらずもゆれる視界は

 

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