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刈りがたしおもいもありぬ秋来る颱風過ぎてすがしい原っぱ
みずいろの兎が跳ねる 妬心とはまだ見ぬきみにたじろぐ時間
神さまがくれたクレヨンなどといいぼくを欺く女学生たち
波たゆるいつかの秋がぎらぎらと迫り来るなり男の内部
姿鏡あり浮かべてわれは宙を蹴る くれない坂の始まる場所で
道もなき芒原にて星を見る 消滅を待つ一族として
救いなどあらず流砂のかなしみをあつめて羨しともだちの指
午後線のびっくり水が暴れだす手鍋のなかのぼくの革命
おもわくもなくて秋草眺めやる地域猫すら不在の時間
野焼きするわれらが野辺に莇咲くなべてこの世の滅びを讃え
坂といえ降る足さえ確かさを失いながら消えゆくなか
夜の河 みなが眠りに就くなかを流れて悼む夏の終わりぞ
水汲みの汲み桶われるひざかりの木立ちのなかで爆発ののち
ささがきの笹のみどりがきみを射る そんな妄想ばかりするおれ
ひとりゐることの刹那を逃れたくひとりの女われは幻視す
ゆれる潮 国家略奪計画を夢想するわれの指に冷たい
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