みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

アマガミ

 

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 たそがれに語ることなしあしたには忘れてしまう空気の色も


 波踊る 真午の月のおもかげがわずかに残る水のしぶきよ


 砂のような日常つづく意味のない標語の幾多ならぶ路上よ


 友なくば花を植わえというきみのまなこのなかにわれはあらずや


 星の降る夜はありしや金色の糸巻き鳴れりねごとのごとく


 雨を待つひと日は室のくらがりにわれは眠れる幼子のごと


 経験は莇の色の万華鏡 回転しつつ未来を孕む


 プラスチック甘噛みをする子供らがやがて膨張する暑さ


 代理人不在の朝よ訴状にて悪魔の業を援用したり


 いまさらに恋しくおもうひともなく模型飛行機片手に駈ける


 ときはるか光りのなかに滲むころわれまたひとり竈を点す


 死はいまもわれに宿れり野生馬の鬣ゆれる丘ぞ歩めば


 流れてはながれ過ぎゆくかたわれの草の葉さえも愛しくおもう


 涕雲ゆるる地平に鳥還すかつてのごとく羽搏きやまず


 曳く舟にきみが消えたといいつのる落日ちかき夏のたわむれ


 望みたる世界はついぞ訪れずランナーたちの胸筋ゆるる


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