みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

母子手帳

 

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 ゆうぞらへかえすことばもなかりかな一羽の鳥を放ちたるなら

 
 母が逝くそらのひろさももろくありとりかえしなどつかない彼方


 そしてまだ父まだ生きぬトーチカの暗き焔はやがて尽きぬる


 知らずにておけばよいとぞおいぬる父母の家庭も姉妹の過去も


 涙とて母の欺瞞に過ぎぬらな子供時代を葬るのみ


 花いちりんの憾みばかりがよいすがる父母の亡霊かならず語る


 姉が買う夫婦家計のまずしさが棄てた本籍には白々


 声濁る 母をも恋うるときもありわれの涙を嘲けらざれしも


 在りし日の母のゆうがおゆれるまで盥のなかの水をば汚す

 
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