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みずからの両手を捧ぐあえかなる南空のむこうガラスがわれる
夏跨ぐ句跨ぎ暑し森閑のなかを歩みて望む才覚
ひとがみな偉くおもえて室に立つ水一杯のコップを握る
彼方より星降る夜よバス停に天使のひとり堕落してゐる
夏しぐれ掴みそこねた手のひらを求めてありぬ裏窓人生
熱病魘されながら夢のなか玉蜀黍の皮を剥きたり
だれぞやのマスク落ちたり疫病の時代の愛の餞であれ
天才の愛とはなんぞ光差す雲の切れめに虹が現る
ひとつぶの葡萄の種子を拾いたる熱波に曝す少年の指
消えかかるおもいの幾多踏み切りに停止ボタンが設置されたり
寂滅の匂いに充ちて室にただ玉葱ひとつ転がしてゐる
来るべき明日など望む焼き林檎皿にもりつつ夜が来たれり
入り江にて鳩が飛ぶなり失寵をおもいわずらうこともなかりき
種子芽吹く季節のときよ手負いなる小鳩の一羽いま眠るなり
愛にさえ渇く砂漠よわがうちの花が凋れてゆくは週末
夏の声 少年たちが駈けぬけたガス・スタンドのうらの亡霊
スペルマもむなしくなりぬ夜のこと牡蠣のごとくに黙る海鳴り
夏草やものみなやがて忘れ去るみどりいろしたぼくのTシャツ
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