みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

系図


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 水匂う両手のなかの海さえも漣打ってやがて涸れゆく


 まだきみを怒らせてゐるぼくだから夏鈴のひとつ土に葬る


 もはや兄ですら弟ですらないぼくが父母ない街ひとつを愛す


 生きるかぎりに於いてもはや交わさぬ契りを棄てる


 いまはもうだめにしてくれ丸太積むトラック一台縁石を蹴り


 伝説の由来は姉の花鋏 月の光りに充ちてうらめし


 光りすら失う真午くらがりに赤ん坊なる人形ひとつ


 森深く罪なるものを抱えつつ望むは兎跳びする少女の群れ


 だれしもがぼくの分身いくつかの戸棚に過去を押し込みながら


 わがうちの野薔薇の棘を数えたる記録係の夜の褥よ


 歌篇編む意思もあらずや献身を水に求める秋雨前線


 ひとがみなわれをかすめて去ってゆく ゆきさきは葡萄畑か


 肉親の肉を断つぞとおもいたつ茎いっぽんを手折るごとくに


 ささやかな願いもあらじ つじつまが合わないままの系図を閉じる


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