みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

眼をひらいて祈るように

 

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 願いには意味などなくて立ち止まる駐輪場が増設された


 水運ぶ人夫のひとりすれちがう道路改修工事の真午


 からす飛ぶみながちがった顔をして歩道橋にて立ちどまるなり


 眼をひらく祈りの対義求めても高架下には車止めのみ


 アカシアの花のなかにて眠るとき人身事故の報せを聴けり


 鰺を焼く竃の焔たぶんまだわりきれもせず過古をば憾む


 夏蜜柑転がしながら暮れを待つ海岸線は終日無人


 われを包む都市計画よ遠ざかる図書館・役所・解体現場


 もしきみがぼくに呼吸をあわせれば実をつけるだろうゆれる木苺


 手を濡らす澤の流れよ永遠を疑りながら愛をもわかつ


 骨を断つクレーンの機動聴きながらあすあることをいまだ信ぜず


 運ばるるラジオの声よいましがたきみの再誕検閲に遭う


 葦を踏むたしからしさのないなかで高架道路がときを啄む


 死がいまだ冷めやらぬなり熱帯夜ならしめられる魚がわたし


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