みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

秋祭

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 なまぐさき死せし魚を売る店も鱗のなかに紛れん夜よ
 

 アキアカネ暁に遇い新しき季節のあいま飛べばあやかし


 入り口と出口でがともに繋がるる輪廻のなかの永遠の秋


 立樹わる木々のなかにて眠るものみな伐られては竈火となり


 遠い夜――火事の報せを聴きながら秋の川上水嵩を増す


 縁日の世界のなかに消えてゆくおもいで遊びの呼び声ばかり


 狐火のなかに斃れて幾星霜生きながらえる妹だらけ


 言葉の眠れる墓地ありぬ秋の最果てゆるりと歩む


 色がみな褪せて眠りのなかにあって葡萄の蔦もわびしいばかり


 語りべの滅びのなかで眼をひらく秋の祭りの光りのゆくえ


 涙なぞ流すものかとおもいつつきみの不在の永久にわれ充つ


 静思する電気設備士たちの午いまだ知らない室に燈があって


 燃えあぐる納屋の昏さに祈るのみチェレの眸のなかの祝祭


 雲垂れて祭りの花を買いにゆくふとわれがのみが御面を持たず


 秋水の湛えられたる桶ありてわれは頭上に月を捕らえる


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