みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

無声物との対話

 


 遊具走るひざかりのなかで子らに取り残されながら


 貨車眠る過ぎるあまたの夢々を並べ替えては棄てる戯れ


 帰宅せるわがアパートの排水をいま流れゆく空蝉たちは


 素粒子に分解されて悲しめど生誕以前の神の業なし
 

 他者の比喩ばかりがまかるガード下少女のひとり靴紐ほどく


 沈む土地・鯨瞰図に書き起こす・いままだ知らぬ未来に寄せて


 フラッシュの照らす両足見えている証明写真の写真機の幕


 LED光れるときのはざまにて神の玉座に坐る猫かな


 鳥除けのCDばかり家囲む統失患者の庭の草たち


 無声ゆえに帰る場所なくてたたずめる交差点の置き手紙あって