遊具走るひざかりのなかで子らに取り残されながら
貨車眠る過ぎるあまたの夢々を並べ替えては棄てる戯れ
帰宅せるわがアパートの排水をいま流れゆく空蝉たちは
素粒子に分解されて悲しめど生誕以前の神の業なし
他者の比喩ばかりがまかるガード下少女のひとり靴紐ほどく
沈む土地・鯨瞰図に書き起こす・いままだ知らぬ未来に寄せて
フラッシュの照らす両足見えている証明写真の写真機の幕
LED光れるときのはざまにて神の玉座に坐る猫かな
鳥除けのCDばかり家囲む統失患者の庭の草たち
無声ゆえに帰る場所なくてたたずめる交差点の置き手紙あって