みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

2021-01-01から1年間の記事一覧

gloomy days

* ないがしろにされた帽子がいじけている パンクしたはずのタイヤが蘇生する秋 右手から左手までの距離で運行される靴が交通渋滞のせいで凋んでいる 解体工事の終わり 道が霞んでしまってよく見えない 町がひるがえるところで生活が始まっている 当然のなり…

green hill hotel

* 星の所在がわからないばかりに、だれもいなくなった室で銀鮭を輪切りにする もはや秘密を持たないからだが鬱と躁のあいだを駈巡る 天文学と植物学を結合したあの手が 男の内奥に侵入して帰って来ない夜 ヴィジョンは討論されないまま、かれの脳に移植され…

星の子供たち

www.youtube.com * インタープレイの遊戯が終わったあとに立ちあがった少女が潜水病にかかってしまい、ぼくはとても悲しい グラスにウォッカを注いで、熱い氷を入れる たったいまはじまったばかりの喜劇が悲劇でなかったというだけの理由で撃ち殺される 兎…

a vision

www.youtube.com * すべてが星に還るとき、射貫かれた魂しいが歩き去ってしまう 駅のポスターが燃えながら笑むとき、女工たちが波のようにゆれる かたわらに犬を連れた男が空中散歩を試みる夜 できそこないのじぶんを正当化したいがために、電柱を登る たと…

ひとびとぼくが通り過ぎたとき [Aug./'21]

www.youtube.com 08/01 零時半に床に就く。二度寝して11時26分に起きる。朝餉。喰ってしばらくして眠った。妹と争う夢。14時40分に起きる。昼餉。16時まえにまた眠る。18時47分に起きる。きょうはなにも手につかない。夕餉。曲をつくろうとするが、うまくい…

the beach boys strikes again

もしも死者が定型ならば、 生者は不定形ということなのか 水に浸かった流木が沖に着くとき ぼくのなかに存った永遠という辞がすべて、 駅という一語に置き換えられるのはいったいなぜか いままで忘れられてきた問題集が解剖される夜、 ビニール傘はなぜレン…

rush over the lifetime

* ラッシュフィルムを装填する婦人会の集いが終わる 月曜日の朝どき 乱反射する小島なおが韻律のなかで回転するのを床屋の主人が見守っている 薄汚れた窓だった スカーフの赤さがあたらしい9月、それを求めていっせいに選手たちが飛び込む 土はやわらかい …

深夜便を待ちながら

www.youtube.com 懐石とは寒期に蛇紋岩・軽石などを火で加熱したもの、温めたコンニャクなどを布に包み懐に入れる暖房具(温石)を意味する。──Wikipedia「懐石」より https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%87%90%E7%9F%B3 * 懐石という辞の語源をむかし曹洞…

変身

* 映画が終わってしまった 夏の情景設定がうまくいかない 配役を忘れたスクリプターが聞き覚えのない歌を口遊む 律動する心臓の音楽 サティとフォーレをちょうだい グレープフルーツのかわりに 機銃掃射された駄菓子屋で、変身ベルトを毀してしまった 子供…

魔物

* 魔女の車は燃費がわるい 煙を吐きながら走る ブレヒトのミュージカルを聴きながらハンドルを握る かの女の車はひとの魂しいを通過する そしてカーブを超えて見えなくなる たぶん、おれは語るべきじゃないのかも知れない 夏のゆらぎにやられ、水を吞みすぎ…

夏の終わり

* 陽物志向のつよい主人公について語る必要があったのは真夏 発見された死体には金塊が隠されていたという事実ともにやって来る真夏 ボートレースの舟券師がセンタープール内を見渡す午後 脂肪を蓄えた腹で、スポーツ新聞を抱えて、静かに歩く いっぽうで主…

a dead man with rainlung [part 2]

* 花が降る 桔梗が好きだった子供時代をおもうとき、葬儀屋の娘が剪定鋏を失ってしまう だからといってみな殺しにするわけにはいかない 時計職人の眼のなかの針 はじめて動きだした時間がじぶんを獲得するなかで、わたしは税官吏と出会う かれは虫垂炎を患…

a gaslighting with summer

* 愉しい対面授業も終わりです 夏の光り、あるいは突堤のひとびとが転落する海が大好きです 電子計算機が回転するデパートの屋上で、演説をつづける右翼のために水を 水を汲んで来ます やがて暗転する頭上で雲がわだかまる㋇、息子たちの誕生日を他人が祝っ…

エッグス・アンド・ソーセージ

www.youtube.com * このあいだ、思潮社のアカウントが平川綾真智の詩集をこむずかしい戯言で宣伝しているのを見かけた。失笑ものでしかない。投稿サイト「文学極道」に決着もつけず、詩壇のヒエラルキー上部で居直ってやがる。そして元管理人のケムリは、借…

3つの新しい唄

先週末、3日間、3曲つくったのでデモをアップしました。 www.youtube.com 「さよならきみへ」 さよならきみへ おろかなぼくの 消えてしまった宝箱 さよならきみへ ひるがえる夜の 衣ずれみたいな夢たちよ 遠く 遠く 遠くなってしまった あこがれよ (間奏) …

sentimental city night

* 男の顔が心臓と酷似する夜だった カーブミラーのなかで膨張しつづけるフロント係が一瞬消えてしまう 涙みたいなビート ないもないところに回転灯だけが寂しい からだの部品を少しづつ失いながら歩くひとびとがキーパンチャーを売却するのは安全地帯の範囲…

水の夢を観た 水を呑む夢でなく、 水にまつわる夢でなく 水そのものの夢 個体が液体になったのか 自我が消失したものか ぼくにはわからない その夢のなかでは 光りと気泡だけで 魚も舟もない アルコールの陶酔感もないなかで、 ぼくは水の記憶というものに触…

a notes about an ordinary fear feeling

* 陰核を嘔吐する仲買人の群れが、天日にかけられようとしている 日曜日がしばらく来ない世界で、砂漠に水を撒くのはだれだ すべてがもてない男の妄想だと決定する冷蔵庫みたいな女たち 人生を博奕のようにスってしまった床屋が剃刀できょうを占う 花と棘 …

失墜の時間

* ふとおもう冷戦だけが温かい戦後に生きる戸惑いの眼 みな底の女がひとり読書する固茹で卵の戦後史などを ふりかえる子供のひとりいくつかの量子学など忘れてしまう 揚力のちがいのなかでまざまざとひきさかれたるわれの翅は 流体が墜落してる・青空が野性…

The Storms of Early Summer [jul/'21]

www.youtube.com 07/01 零時過ぎてプリアンプを買う。酎ハイを買う。眠る。6時半に起きる。酎ハイを買う。必要なものを買って9時過ぎに外出。鶏胸肉3つ、ブロッコリー3つ、オクラ1つ、オイル1つ、あとはパスタソースを買う。コンビニで老女がまちがっておれ…

It's a long way back to Germany

www.youtube.com * 花が回転する 蕊が発射され、少年の顔面を貫くのは方程式の手解き 悲しみを知らない石のために水を枯らすのは箱庭の抒情と、拳 たとえばあなたのなかで芽吹く敵意にだれも気づかってやれないときに、鱗を生やしたアルコール中毒者がふりあ…

atomics season

* 飛行士の黄昏をかき分けて、青果物を売りにゆくのがぼくの弟です 鞄がゆれる 靴が跳ねる 時計職人になれなかった弟ですから 厚揚げにオクラを刺して遊ぶのはやめなさい どうか、ペパーミント・チョコレートをぼくにください 寄る辺を求め、天才にも負けな…

素粒子

* たがいの皮膚を確かめ合うように日暮れの街で巡り会うとき いささかの惑いもなしにくちづけをする若人のかげを横切る朝 なべてなお花が明るいわけをいま話しましょうとナイフをかざす 迷い子も星の隠語になりゆける天文学の裏地の科白 かげはやさしく月は…

星からのわるい報せ

Mauvaises Nouvelles des étoiles * ヨナが啼く湖水のうえの月あかりいま語りたる出イスラエル 死がいまだ経験ならず機関手の手袋ひとつ星に盗らるる 朝来れば天体模型消えゆけり煙だらけの窓がささやく オリーヴの罐詰めひとつ破裂する銀河の果ての汐のか…

オンデマンド&電子書籍・販売中

いままで刊行した作品を以下にまとめます。一部無料のものや、試し読みができるのもありますので、気に入った方はどうか買ってやってください。 mitzho84.hatenablog.com mitzho84.hatenablog.com mitzho84.hatenablog.com mitzho84.hatenablog.com mitzho84…

夢の址地

* いまきみが擦った燐寸のせいでまた幾星霜の銀河は暮れる 水がまた滴りだしたキリストのまねごとのまま復活ならず マタタビの宙返りかな椅子を打つ家具職人の首の汗よ 鹿の死の歓び幾多かくすべく芭蕉の葉などかけて過ぎ去り 夢こそがほんとうなれば鹿の死…

夢から醒め、霧は舞う [jun/'21]

06/01 短篇集をKindle用データに変換。入金履歴をコピーするために口座を見る。3月時点で¥93,920だった収入が、¥90,290に下げられてる。¥3,630も減額されてる。ひどい暴挙、これぞ生存権の侵害だ。朝になったら役所に申し入れるしかない。¥3,630分の可能…

バナナな日

* とにかくバナナだった。凾のなかのバナナ、作業台の上のバナナ、廃棄袋のなかの黒いバナナ、女の手のなかのバナナ、そしておれの手のなかのバナナ、おれの股間にぶらさがっているバナナ。おれは通称ゴカイで作業をしていた。薄暗い倉庫の別棟の5階で、男3…

天体妄想(2)

映画「パリ、テキサス」シナリオ付写真集 同 * あるひとから、稲垣足穂を読み直すようにいわれて読んでいる。あるひとというのはもちろんわが師、森忠明そのひとだ。今月、第2歌集・準備稿(上巻)を送ったものの、かれは一切評価しなかった。「また一から…

ルパン三世とおれ

当年36にもなってフィギュアなんぞを買ってしまった5月。モノはルパン三世・パイロットフィルム版(1969)である。なのでデザインは後続作品とは大きくちがっている。たしか芝山努のデザインだったとおもう。頭部が原作に較べると大きすぎる。ちなみにフィル…