みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

星の子供たち


www.youtube.com


   *

 インタープレイの遊戯が終わったあとに立ちあがった少女が潜水病にかかってしまい、ぼくはとても悲しい グラスにウォッカを注いで、熱い氷を入れる たったいまはじまったばかりの喜劇が悲劇でなかったというだけの理由で撃ち殺される 兎のような眼、そして血抜きされるラジオの声 初体験を超えた経験がもしや、きみとだったかも知れないから、とっととそのスカートをたくしあげろ

   *

 声にかたちがなかったころ、ぼくはよく裏庭に立って三鬼を朗誦した 育ちきれない木々のあいだを縫って羊が変形合体する夜 いまよりも残忍なレコードが燃える 育ちすぎた森を焼く悲鳴のような群れ ぼくが生涯かかって知りたかったもの それはダートの終わりで死んでしまい、いまはもうなにも見えない

   *

 カーゴクレーンが回転する採石場で未熟児が展示される 9月の熱いかぜがバルーンを鳴らし、そして明滅するのは俳諧の技法 くるまトンボよりもしたたかななにかが翅を残して消えた たったいまユニゾンするギターがアナログ・ディレイのなかに沈む 声はだれだ 道はだれだ たぶん、きっといままの幻視のなかでもっとも貧しいものが勝ち得ることを文明は知っているのだ

   *

 スケールの練習に厭きてしまった 少年たちのなかに悪意の種を撒きたい 覚束ない足取りで階段をあがる あがる あがる それはドーナッツに仕組まれたイリジウムの害毒 さらなる進化は地図のなかにない だからといって、きみがいいというまでに、取り残された星が爆発するのをぼくはハイ・ライフのむこうで眺めるわけにもいかないでいる

   *