2021-07-02 夢の址地 短歌 * いまきみが擦った燐寸のせいでまた幾星霜の銀河は暮れる 水がまた滴りだしたキリストのまねごとのまま復活ならず マタタビの宙返りかな椅子を打つ家具職人の首の汗よ 鹿の死の歓び幾多かくすべく芭蕉の葉などかけて過ぎ去り 夢こそがほんとうなれば鹿の死もすずしくありぬ芭蕉の葉 月のように窓がひとひら中空に輝くのなら李白を撃てり 真鍮の夢と戦争。世界婦人ふたたびスカートをめくる かくてなお月は昇れりコダックの最期の凾をあけるゆうやみ 離陸する一機の夢よ白痴なる翼のごとく時は濁れる *