みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

a notes about an ordinary fear feeling

 

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 陰核を嘔吐する仲買人の群れが、天日にかけられようとしている 日曜日がしばらく来ない世界で、砂漠に水を撒くのはだれだ すべてがもてない男の妄想だと決定する冷蔵庫みたいな女たち 人生を博奕のようにスってしまった床屋が剃刀できょうを占う 花と棘 死に絶えた鋏で、箒と逢い引きするさまを夢想する時間がない 煉獄のオープンセットで罐詰が爆発する 鰯の詩集が散乱した路上で非合法の向日葵を売っている少女 かけがいのない痛みと、それを想像できない畜群にまみれてセックスがしたい したい

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 平凡な恐怖だった 汗腺が肥大した下半身が燃える速度で、みながみなトーストを囓りだす 感染が拡大して上半身の砕ける温度で、みながみなを責め立てる ピストン運動に則った十二気筒の牝馬が、いまに阪神競馬場を疾走する おれはもうこんな日々に厭きあきなんだ 主人公のいない街で、たったひとり瞑目するのは立体の技法 飛ぶ空がないからといって翅をたたむわけにはいかない 古本屋で買った時刻表には航空力学についての言及が1行たりもない おれは陰核、そのものになりたい その術を無料で教えろ

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 もともとなかったものに憬れることがある 愛とか、やさしさとか、水球用の水着とか、これからも訪れない輝きだとか とにかく、そんなもののために人生を「くそ喰らえ」してきた カントとまんこのちがいだとか、武器と花のちがいとか、殺人と鶏肉のちがいだとかがみな、チヨコレイトとパイナツプルされてしまい、いまでは辞書のなかで死んでいる そもそもきみはおれじゃないし、かれは三人称であって、季語ではなかったらしいから、おれはもうやめる 詩を書くのはけっきょく、

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