みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

sentimental city night

 

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 男の顔が心臓と酷似する夜だった カーブミラーのなかで膨張しつづけるフロント係が一瞬消えてしまう 涙みたいなビート ないもないところに回転灯だけが寂しい からだの部品を少しづつ失いながら歩くひとびとがキーパンチャーを売却するのは安全地帯の範囲外だった 少なくともおれが見つけた男たちはみな指向性マイクを内蔵している過去という名の猫である 住宅地図を眺め、番地のなかの頸椎を検索するとき、おれの手は淡く、透き通った酸模の繊維みたいに郷愁を曝しながら、電卓を蹂躙する きっと寄る辺を求め、きみの耳にささやくとき、青柳をかぶった冷蔵庫のなかを互いの信頼を忘れたように生活が、尋ね人欄に掲示されてしまうのだ

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 夕立が計画する 献立が警告する 政府はわれわれを代弁しない トートロジーの彼方へ球を投げる被疑者たち 映画が終わった夜 ゆっくりと破産していく不動産はあまりにも素早い 天火で焼いた子持ちシシャモと、吉永小百合の犠牲者たちが 帰宅準備を始めた 都市と生活がふたりをスプリットするバー・カウンターで、投げやりになった硬貨が裏を示して微笑する たったいま折れたバットで卒塔婆を代理するキャバクラ嬢のあまたが空気を切って、おれのなかに這入って来る なんと素晴らしい家、なんと素晴らしい庭 涙も悲しみも知らない顔が自身でないからといってビニール・プールに最愛を沈める

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