みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

a gaslighting with summer

 

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 愉しい対面授業も終わりです 夏の光り、あるいは突堤のひとびとが転落する海が大好きです 電子計算機が回転するデパートの屋上で、演説をつづける右翼のために水を 水を汲んで来ます やがて暗転する頭上で雲がわだかまる㋇、息子たちの誕生日を他人が祝っている 朽ちた舟と一輪の花を抱えて父上も転落する詩集の午後 わたしはとても寂しい それは脚韻を忘れた少女たちが兎唇のように走り去ってしまうなかで、たったひとつ発見した試み ときのあいだに閉じられた骨董商がウクレレを折るとき、その笑顔がどこまでもまぶしい街区の真夏だ

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 透明度の濃いガス灯の光りが、夏のなかで死んでいる のを警官が確かめる ガス・ライティング 追いつめられた男の証言に寄れば、ラジオの声がかれを仄めかしているらしいが、詳細を訪ねたとたん、かれの口から言葉が失せる レイヤーのちがった画像が編輯を拒むのは天体の技法に非ず 電車に乗ったおれが週末の駅で容色された作業内容を破棄し、その中心沿線をひるがえるのはたぶん、秋になるだろう いったい、いつまでおれは二次元なのか

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 ベルリンの天使たちが午睡する 遠ざかる生家の悪夢と、父の亡霊 かつての傷つきやすかったころをおもいだす いまではふてぶてしい男になってしまった だれの夫でもなく、恋人でもない このまま父にならずに生きるだろう せいぜいのところ、犬の一生だな 閉じられた記憶を訪問する幾千人のガス器具販売人よ いままさにプールサイドでキックを決めるポーカーフェイスの若者よ あたらしい言語がそのまま昼餉に変わる水曜日、薄汚れたジャケットだけが砂塵のなかで生き生きとしているよ

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