みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

the beach boys strikes again


 もしも死者が定型ならば、
 生者は不定形ということなのか
 水に浸かった流木が沖に着くとき
 ぼくのなかに存った永遠という辞がすべて、
 駅という一語に置き換えられるのはいったいなぜか
 いままで忘れられてきた問題集が解剖される夜、
 ビニール傘はなぜレンタルビデオの駐車場にあるのかを教えろ
 とどまれ、
 とどまれ、
 苦い米を喰う蛮族の宴、
 産廃を蒸留して酒をつくる女たち、
 神は13行の標、
 ならば詩学は半ダースの鰯だ
 畸形の祝祭、そして浸透する夜
 かがり火を焚いた男の腕が延びて、
 いつのまにか叙情する意味、
 和解を果たせずにいることが人生の本質なんだ
 黒い膚の馬が駈け抜ける丘、
 不定形が死者ならば、
 定型は生者なのか
 粒子を崩壊させる一滴の宇宙や、
 ジューク・ボックスのなかで精製される量子とが、
 円環状の馬場のうえをひるがえる時間が、
 時には涙さえ超越する
 立ち去れ、
 立ち去れ、
 子供時代に見たことのある、
 見覚えのある男が話す
 あのとき、
 きみがぼくを突き放したときから、
 ぼくの解剖学が狂った
 心臓のかわりに、
 死者を飼うからだを、
 ここに持ってしまったということを
 なべて夜は温かい月に照らされ、
 いま住宅地図を疾駆する
 ベニスの北から、
 シカゴの西まで、
 神戸の南から、
 タンジールの東まで
 生者が飢え、
 死者が富み、
 夜霧の発つ兎の巣穴で、
 たったひとり、夜を信じない男が、
 死者と婚姻を果たし、
 ぼくの墓へと、
 たどり着く。