みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

It's a long way back to Germany


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 花が回転する 蕊が発射され、少年の顔面を貫くのは方程式の手解き 悲しみを知らない石のために水を枯らすのは箱庭の抒情と、拳 たとえばあなたのなかで芽吹く敵意にだれも気づかってやれないときに、鱗を生やしたアルコール中毒者がふりあげるキャブレターが、オイル洩れのなかで輝くのは多神教と経済の懺悔だった でもおれはたぶんコールマンとのワイフスワッピング大会に敗れた挙げ句、夜長姫の耳を斬る 

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 転生したくはないのに天使がうるさいから、ぶちぎれて隣家の犬を撃ち殺したら、花でいっぱいの器がひとりでに割れ、乾燥大麻の塊りのなかで自動車がエンコする 旅人は動詞だ やがてすべてが美しく欺瞞するまえにかの女は飛ぶ どこか北部の河岸で、畦のうえに立ち、水流を確かめ、自身の内奥に棲む、過去の住人たちをひとりずつ赤色のない国へ、つぎの領邦へと亡命させる

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 馬が倫理だったときをおもいだす そんなときなどなかったのに 西脇市の育成場、それがあった場所で夢想する一脚の椅子よ 防弾ガラスの天井で砕け散るおれの伝書鳩よ いままさに儒学から逃れ、論理を失い、みずからに鞭をあてがう1ダースのジョッキーと、天秤座の女優を二重露出して、帰り道のない家路につくのはたぶん、みんなおれのせいだ

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 競技用ボートにアニミズムを乗せてエンジンをかける すると亡霊の日活ニューフェイスから、おれの育った町が見える 残酷博覧会が愛しい女を騙る夜 湖水を打つ鏡が氷上の稲妻となってニコラス・レイの残像を集団投射するのはハシタナイ だからといって解剖美術がすべての善き男女を救済するまで、おれがおれであるという確かさなんかなかった ドイツに帰るべきだ

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