みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

夏の嵐


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 夏の嵐 かぜにまぎれて去るひとかげを追っていまだ正体もなく


 たれゆえに叫ばんか夏草の枯るるところまで歩めるわれは


 浴槽が充ちる早さで夜が凪ぐ嵐のあとの傍白を聴け


 なにもかもが淡いよ夏のかげろうの辻をひとりで帰る足許

 
 醒めかけた夢が頭蓋をゆらす昼 鍋に刻んだ鶏肉入れる


 かたわらにだれがなくとも歩むのみ夏の鏡に揺れる祝祭


 なにげなくかの女のなまえくりかす口の運動ですらなくとも


 免罪符なかれば奔れ かぜのなか埋もれるだろう陽のひかりまで


 満潮のときよ潮を流れ来る魂しいらしきものなどあらず


 いずれまた夢で逢おうか弟よきみの非在をしばし悲しむ


 so I knew, くちごもりつつテレビにて深夜放送の受信が終わる


 ぽっかりと暗くなりたり郊外の花を摘みゆく女がひとり


 so I gone, 秒針刻むきみの眼の奥に潜んだためらいなぞも

 
 かすかなれ安らぐときに存るならばきみのなまえをみずから忘る


 海岸線ゆられて帰る魂しいのもっともやわいところまでゆく


 それでいい 樹下に入れり真昼どき 迷いのなかにもうひとりのきみ


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