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訪れるわが世の終わり卑語にすらたじろがずにはおられぬ母よ
神学者警官妊婦酔っ払い黒一色の信号機たち
花にまみれ、なぜか悲しい横顔は朝顔市のなかの泥棒
ざくざくと剪らるる枝よ心地よく死ねる場所さえあればよし
ひとが飛ぶ翅さえあればおれだって云々かんぬん閑話休題
ふり返る貌はかの女でなかったね かげりゆくなりわが誕生日にて
おもさがあるだけで 存在するとはかぎらない夏の街
着古した制服ばかり透明な夏の花櫚を撃てよおまえは
製造過程ひとつ忘れて耳のない象のおもちゃがいまを切り裂く
じゃぼんという音が跳ねて気づくとだれもない浴槽にわれひとり
ぬくぬくと毛布のなかでくり返すあの日の夜の約束忘る
両手にはなにもなくてもいいのにな果実くすねるわれのうしろよ
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