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人間という病いは癒えず真夜中の修辞のひとついま見失う
雨季来たり帽子の比喩を探さんとするに紫陽花暗し
道わずか残して来たり夕月のもっとも高き空を見上ぐる
わが過去の贖い終えていつの世か役目を終えて退場するか
なにもかもさかりを過ぎて萎れゆく鰥夫という入れ物に安住なし
束の間の休息足りぬ駅舎にて列車のひとつ乗り逃すこと
死のはざま一瞬光る葉桜の嘆きの声を聴くふりをする
午後遅く不在通知を受け取ってわが存在の根拠失う
みずからの葬列ありて懐かしむかつて遊んだ英雄たちを
救抜もなくてひとりの食卓に蝿が飛び交う午前10時よ
経験も物語に数えたる男のなかの宿命のため
それでまた滅びつつある人生のト書きばかりを読み返したり
ひと知れず遊びを学ぶ中空の立方体のささやきのなか
だれしもが神と決別するなかで戸惑いながら裁かるるわれ
五月雨のなかにわずかな顔がありひとり眺むる昼餉のあとは
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