みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

かげふみあそび

 

 

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 タンポポの花が砕けてちる跡に城が建つかと見守る猫よ


 老母はわれ捨て去りぬ七月の蛇に睨らまるかげふみあそび


 きら星もあめりか製か運命の時制誤う考古学かな


 心臓の澱に漂う過去たちと揺るる午前の月が消えゆく


 子供靴発見したり真夜中のサービスエリアひとかげもなく


 窓口のおねえさんらが問いかける小さな邦の映画論なぞ


 薬屋の濁れる窓よ夕陽にて薬剤師らのおもざし固く


 花がないがしろにされた区分でおれはあなたの歌を忘れた


 ただわれも踊ってみたいこの夜の鈿女(うづめ)もいない岩戸のまえで


 天唇の綻び見たり夏の夜の光りのなかで茗荷刻みつ

 
 夏草の萌ゆる地平よわれは去る草刈り鎌の眠りのなかで


 移転せし図書館遠く酢漿草の束を抱えてゆく税関前


 ひとらしきいとなみあらずみずからをこの地上より間引く企み


 盛る夏──かげふみあそび終えて来て樹下に入れりかわれの亡霊


 水葵咲くところまで駈けてゆくわがうちに棲むゆかこのために


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