みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

花とゆめコミックス

 

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 泣きそうな顔で見つめる 西陽にはきみの知らない情景がある


 汗の染むシャツの襟ぐり 指でもてなぞるたえまない陽の光りのなかで


 きのうとはちがうひとだね きみがまた変身してる九月の終わり


 涙顔するはきのうのきみのはず いてもたってもいられぬ孤独


 探す指あってひとりの夜長にてキーを叩いて祈るさみしさ


 彼方には夕陽落ちる 電柱のかげにかくれたものたちもゐて


 救いなんかなかったなんてつぶやいたもうじき朝のときを憾みぬ


 炎天の残る九月よみながみなおなじ答えをくりかえす昼


 愛するとうそを吐いたね 幾年もかけてわかった鍵の在処よ


 季がめぐる 星がめぐって夜たちのうらがわいつもだあれもいない


 透き通った葉っぱのような顔たちにかこまれて職場は静か


 嘆きとはぼくの渾名か 壁ばかりがこの室には在って


 レモン水放つ天使よ焦がれたるものなどもはやなし


 祈りさえなくて盥の水寄すわがてのひらの苛立ちなどを


 死を願う ことばばかりが空を切る夏の名残りの遠い太陽


 ムルソーのようにじぶんを守らない 世界のやさしい無関心あって

 
 ここにゐてだれも知らないような顔して笑うんだあしたのぼくは


 だれがまだぼくを憶えてゐるだろう 格子のむこうにばらばらな過去


 泥を踏む馬のひずめのようにただうつくしいものが汚れゆくだけ


 花は花を語らず 夢は夢をめぐれり 漫画のページ端をいま折る


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