みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

2023-01-01から1年間の記事一覧

短篇集『旅路は美しく、旅人は善良だというのに』

’11年から’19年までの短篇をまとめた。表題作と『光りに焼かれつづける-』は当時、群馬の詩人・澤あづさ氏が評価・賞賛してくださり、じぶんとしてはようやく文体を見つけたという気分だった。それからも作品を寡作ながらつくっていたものの、PCが故障して…

ガリバートンネルの閉鎖

歌誌『帆(han)』は、けっきょく三浦氏の復帰と、3号の延期ということで片がついた。まあ、現時点で原稿が埋まっていないということもあるし、それでいいだろうとおもってだ。12月までにいったい、どれほど紙面が埋まってくれるのかはわからないが、ともか…

索漠とした気分、寂滅たる時間。

先月末にはじめてひとまえでmodularを演奏した。作業所でだ。ファンクションキーを押し忘れたので自動演奏がうなくいかなかったが、なんとかやり終えた。きのうから作業所に復帰。はじめてライン録音でVolcaシリーズを録音した。なかなかのできだったとおも…

星蝕詠嘆集/Eclipse Arioso【Second Edition】販売開始

'19年にだした処女歌集を再編集し、123ページに凝縮してリリースしました。よろしくお願いします。 www.seichoku.com 跋文より この歌集のオリジナルをだしてから、それを苦々しくおもっていた。あまりに自作について甘く、厳しさがないことをだ。今回、改訂…

これからの方針

○文藝⇒短歌への一本化⇒文藝活動そのものからの離脱 小説はみな終わらせ、リリースしたので次は詩を終わらせる。いま詩集を書き下ろしているのだが、それを来年には完成させて第5詩集『夜の雷光』としてリリース予定。 短歌は来年、書き下ろしで第2歌集と、未…

黒犬の眼球

慈悲とつれあって深夜のスーパーを歩いた あるいは慈愛とつれだって萩の花をばらまいて歩いた おれたちにとっての幸運が猫のしっぽであったような、 あるいは取り残された者たちの最後のワルツであったような、 そんな心持ちで郊外を歩いたんだ まだうら若い…

ブコウスキーの朗読

for an album "Radio Bukowski" by Guilherme Lucas え? なんだって? おれは──英語がわからない。 ね、──そうだっていったろ? 聞えるか? なら水をくれ、 水でいい、 ふつうの水でいい、 炭酸水でも、 天然水でもない、 水道水に氷だ 氷はなくたっていい …

天使たちの戯れ

どうしたものか、現実がむきだしにされた食卓で、 顔の見えない相手と朝食を摂っている 現実はどうもおもすぎる おれは虚構の度合いをもっと深めたい だってそれがおれ自身の生き方だからだ もっと深いところまでうそでありつづけたい ふと手にとった短篇小…

なまえ (overwriting)

あたらしい夢のなかで眼醒めることができたなら もうきみのことを懐いださなくともいられるかも知れない でも、ひとのない13番地に立つたびにきみを懐いだす いままで読んで来た悪党たちのなまえを算えるたび じぶんのなまえがわからないくなる どうしたもの…

窓をあける

羽根を忘れて取りにもどったのは11時半で、 きみのいない室から、やはりきみのいない室へ移動した きみのいない台所で、きみの指紋のないコーヒーを淹れた 少しばかり息を吐き、そしてじぶんがひとりぼっちだという事実 赦されないことをしてしまった幾年も…

鰯の顔

* 日干しする鰯の顔にぎらついたわれが映った両の眼の真昼 それは否 これも否かな ひとびとが遠く離れる夜中の気分 立ち昇る狼煙のごとく葬儀屋の建物がまた軒を閉じゐる 人間の家が心のなかになくきみのことばに滅ぶ祝祭 色が迸る 輪郭を突き破っては光り…

歌集『星蝕詠嘆集』改訂版

www.seichoku.com '19年にだした歌集を再編集して、出し直した。40ページ削って好い歌だけを残した。この歌集がどうなるのかはわからないが、非常によくできたとおもってる。前回のように『角川短歌』に紹介してもらいたいものだ。

バロウズの余白

www.youtube.com * バロウズの酔夢のうちに横たわるおれの余生のカットアップは 塒なく地上をわれの巣と見做す老夫もあらじ秋の地平よ かぎりなくヤヘクの夢を見るときのアジア革命ひとり眺むる 呼ぶ声もなくて寝床に眼を醒ますヘロイン切れの酔い覚めの寂…

かの女たちにはわからない

* 秋声のうちにおのれを閉じ込めてつぎのよるべの夜を占う 道を失う ひとの姿をした夜を突き飛ばしてまた朝が来る なぜだろう どうしてだろう わからない蟻の巣穴に零す砂糖よ みながみなわれを蔑して去ってゆくこの方程式の解とはなんぞ 旅を夢想する儚さ…

倉庫街のタンゴ(2013)

ベルが耳をつん裂くようにけたたましく十秒ほど鳴って、止まる。 サミュエル・ベケット『しあわせな日々』 * 照明器具 入出庫作業 在庫整理 ピッキング 派遣からの正社員登用アリ──求人広告 * かれにとっていまいましい月曜日の、早い時間というのにもかか…

feelin' bad blues

www.youtube.com 田園のなかでブリッジミュートを鳴らしつづけていた男がふいにうごきをとめ、 河べに立ちながら永遠ともおもえる時のなかで鳥を眺めている かれが悲しみの澱みたいにおれには見える それはこの10年ものあいだ眠っていたおれのなかの慈愛みた…

花とゆめコミックス

* 泣きそうな顔で見つめる 西陽にはきみの知らない情景がある 汗の染むシャツの襟ぐり 指でもてなぞるたえまない陽の光りのなかで きのうとはちがうひとだね きみがまた変身してる九月の終わり 涙顔するはきのうのきみのはず いてもたってもいられぬ孤独 探…

夏のよるべ

かつて昭和記念公園でわたしは森忠明と歩いていた 夏のあじけない夜でしかなかった わたしは師匠と話しながら 東京都市の暑さのなかで これからの人生についてみじかい詩句をひねりだそうとしていた 先生はいった、──"帰らぬといえぬわが身の母捨記"って季語…

ぼくらが幽霊になるまで

捧げられたものと与えるものの区別がつかないままで、 ぼくは語って、きみは答えた、のはぜんぶがぜんぶ正解じゃないから なにものともつかない悪夢を乗せて亡霊がインターステイツを走る あかときのまぼろしみたいなかたちでもって説明書を読むとき、 セメ…

ラージサイズのペプシ

* くちびるの薄き女が立ちあがる空港行きのライナーのまえ 夏終わる金魚の群れの死するまで鰭濁るまで語る悲歌なし もしぼくがぼくでないならそれでよし住民票の写しを貰う 悲しみが澱むまでには乗るだろう17系統のバスはまだ来ず ひぐらしも聞えて来ないゆ…

予感

* 雲澱む雨の予感のなかにさえ慄いてゐる三輪車たち さよならといえば口まで苦くなる彼方のひとの呼び声はなし カリンバを弾く指もて愛撫するわが身のうちのきみの左手 ゆうづきの充ちる水桶ゆれながらわれを誘う午後の失意よ 手鏡を失う真夏・地下鉄の3番…

夏の間奏曲

* モリッシーのごと花束をふりまわせ夏盛りぬときの庵に 待つひともなくて広場に佇める地上のひとよわれも寂しい 蝶服記ひとり観るなり眼病のおもいでなどはわれになかれど ものもらいおもいにふける金色のゆうぐれなどはここにはあらじ いちじつの終わり来…

逆噴水

* 指で以て詩を確かめる未明にてレモンピールを浮かべたそらよ 夢のなかに愛しきものはありはせず河の流れが頭を伝う 荒れ地にて花を植えたり詩語などつつしみながら丘を下れり 待っている 果樹園にただ燈火が点るゆうべをおもい焦がれて 草萌ゆる夏の光り…

cabaret london

www.youtube.com * 毀れやすき殻のうちにて閉じこもる卵男のような少年 箒すら刑具おもわす蒼穹≪あおぞら≫に逆立つ藁の幾本を抜く 幻蝕のさなかの夜をおもいだすたとえば青いライトのなかで 街かたむきつつあり寝台のうえにおかれた上着が落ちる 菊よりも苦…

戦車現る

* 雷鳴のとどく場所まで駈けてゆく光りのなかの愉しい家族 駅じゅうにおなじ女が立ちふさぐ地上に愛のなきことに啼き 友だちがいるならいずれわが骨を拾わすといいてひとりの夏 隠さないで──きみのうちなるぼくがいう驟雨ののちの光りのなかで 夏またぎ 自…

樹皮濡れて

* 夜なべてほむらをかこむきみのためくべる夏の樹燃え落ちるまで すべての朝のためにできるのはきみのため息燃やすことのみ やがてまたぼくが終わろうとする夜に蝉のぬけがら一切を拒む なが夢のさなかに存ってわが咎をおもいだしたりさよなら人類 青嵐去っ…

八月のレパートリィ 

* 声ばかり此処にはありておきざりの敗馬眠れる夜のれいめい なおさらにきみをおもえばゆうぐれのおわりのいちごくちにつづめて 公園の見張り塔にて子供らの兵士たちかな銃声もなく たそがれに凋む風船・いくつかの断章ばかり果てて転がる アキレスの戦いば…

夏の嵐

www.youtube.com * 夏の嵐 かぜにまぎれて去るひとかげを追っていまだ正体もなく たれゆえに叫ばんか夏草の枯るるところまで歩めるわれは 浴槽が充ちる早さで夜が凪ぐ嵐のあとの傍白を聴け なにもかもが淡いよ夏のかげろうの辻をひとりで帰る足許 醒めかけ…

友だち

洗いざらしの衣類のなかで、リーバイ・パタの詩画集をひらく 女のいない男がしてやれるのはたったそれだけのこと コインランドリーが不法占拠されてしまう夢を ついさっきまで見ていたんだよ もしきみが電話をかけてくるならば、 ほんの少し孤独を信じられる…

a missing person's pressカタログ

ampp-001 38wの紙片 ×絶版ampp-002 for MISSING/The magazine Vol.01 ×絶版ampp-003 38wの紙片[second edition] ampp-004 終夜営業|Open 24 hours |発送受付ampp-005 kaze-bungaku / mitzho nakata 5 demo tracksampp-007 世界の果ての駅舎 詩群2014-2016…