みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

feelin' bad blues


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 田園のなかでブリッジミュートを鳴らしつづけていた男がふいにうごきをとめ、
 河べに立ちながら永遠ともおもえる時のなかで鳥を眺めている
 かれが悲しみの澱みたいにおれには見える
 それはこの10年ものあいだ眠っていたおれのなかの慈愛みたいなものなのか
 ともかくおれは早めに切りあげて河をあがった
 石を探すにはこの河べはよろしくない
 だれか水切りをする音、
 そして最後の暗殺
 どれをとってもなにを見ても変わらないおれのなかの澱
 その澱を鎮めてくれるひとをおれは求めつづける
 この静寂、そして感傷
 惨めったらしいこのおれを救抜するひとを
 おれはいまも求めている
 杭がいっぽん河床へかげを落とすなか、
 疾走する光りと、
 失踪した人間とが語り合う
 ほんとうに大切な時間
 やがてなにも見えなくなるまでにどれだけのおもいをたずさえていけるか
 そっと帽子を脱いだ老人がおれの道標にでもなったかのようで、
 おれはなんとなく微苦笑して、そのままかれのあとを追う
 なんとあたらしい薫陶、なんとあざやかな苦み
 それでもいつしかかれとははぐれ、
 なにもない三叉路にたどり着く
 木は枯れ、水もなく、
 たったひとつの空に鳥さえもない
 どうしたものか、
 おれはつまづいて、
 そのまま身うごきがとれず、
 なにかを掴もうと手を伸ばす、
 そのときだった、おれはおれの手を握って、
 やがておれとともに澱のさらに奥へ、
 心の内奥へ、北のなかの北へ、
 足もともふたしかなまま歩きだして、
 黒い犬と混ざりあい、
 四つ足で国道を駈け抜けて、
 森のなかへと入っていったんだよ、
 さらにちがう悲しみの澱を求めてね。