’11年から’19年までの短篇をまとめた。表題作と『光りに焼かれつづける-』は当時、群馬の詩人・澤あづさ氏が評価・賞賛してくださり、じぶんとしてはようやく文体を見つけたという気分だった。それからも作品を寡作ながらつくっていたものの、PCが故障してデータを失った。そのため、『れもんの若い木々』や、『愛について-』や、『ディック-』は最初から書き直すことになった。
本作はなんどか改稿しており、当初は『パンケーキの墓』は収録予定になかった。ただ、そのあと鹿児島の詩人・夢沢那智氏のすすめもあって収録した。もともとあった『マイクロフォーン・アイスクリーム』と跋文を削除し、『エセ詩学の-』を書き下ろした。当初エピグラフとしてベケットの引用があったものの、師匠の言に従って削除、題名・収録作も変更したものの、今回はベケットを削除しただけにとどまった。これが決定版である。’12年には『倉庫街のタンゴ』という作品も書いたが、これは冒頭のみを残して『ひと殺し』として収録した。
この作品を澤あづさ氏へ献ずることにした。わたしの小説をはじめて評価し、対価を払ってくださったことをわたしは忘れない。
収録作
旅路は美しく、旅人は善良だというのに *9
れもんの若い木々 *36
愛についてのみじかく、そして淡いなにか *53
ディック・フランシスを読んだことがない *58
家出娘 *69
ひと殺し *71
からっぽの札入れとからっぽのお喋り *80
インターネットと詩人たち *85
小説のあいまに *89
おもしろおかしく生きて死にたい *95
みずから書き、みずから滅びるってこと。(Reprise)*112
オイルサーディンによって書かれた詩論 *135
パンケーキの墓 *141
エセ詩学の半ダース・パック *155
それはまるで毛布のなかの両手みたいで *181
光りに焼かれつづける、うち棄てられた冷蔵庫のブルーズ *201
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