2019-01-01から1年間の記事一覧
* たぶん多くの人間が罰するということに激しいけれど鈍感で、赦すということに屈辱と同義なものを見いだしている。これは偏見である。もちろんのこと、これから書くことはすべて偏見の為せる業である。かれを赦せとはおもわないし、さらに罰しろ、曝せとも…
おもいはさかる、 きみのことが好きで いつか会えるとぼくはおもってた でもそれはまちがいで、 ぼくはみずからの熾きを消す じぶんのなかで永遠みたいにつづく、 過ぎ去ったものへの恋着や、 マイナー性やなんかに甚だ厭気が差したんだ 休日の静かな路次、 …
* おれの短歌がイッた。歌集のための前準備が終わったということだ。あとは15年分の作品を撰んで本にするということだ。撰はわが師に任せるとして、おれは来週から装丁のためにラフに手を着けることにした。金曜の長い午后のことだ。おれはもう2年、まとも…
* すずかぜや眠る男の夢に吹き一瞬の絵を描きて去るかな 少年の一人の赤きまなこもてピカソの青に病むころもあり 他人の手求む一人の夜行より月の光のをはりへ急ぐ しぐれさす詩の一行の終点をどこに打つかな寺山修司 雁帰る何処ぞと問うも声はなし大方貧し…
なにもかもが融け合うみたいで、それでもけっきょくすれちがうだけ やがてきみをぼくが発見するという論証はなく、 かれがでていって帰らないという仮説が、 頭をもたげるんだ、 だから週末のモータープールで、 ぼくはうつくしくも祈ったんだ ぼくはあさま…
* うごくことさえできずにきみが立っているのを観察する植物 でもそれがなんだったかがおもいだせない夏草のかげ くだらないひとだねっていわれるかも知れない大人になりきれないぼくは 花かすみ病かすみのなかでいま身をひらかれるひまわりの種 きっとここ…
ぼくがいいたいのはそういうことじゃないくって、 たとえば蛍火が夏のラインをかすめていったあとの、 そのガードをいまいちど確かめたいんだっていったあのとき 夏草がえらく繁った港町の稜線、 車が遠ざかる一瞬、 光りが光りでなくなる一瞬、 つまりはそ…
そのわけを聞かせて欲しいんだってぼくはいった それでもかれはなにも答えなかった いったいなにが始まるのか、 終わるのかもわからないままで、 階段の踏み板を踏む 鉄が軋む どっかで花火みたいに警報が鳴る それがなんなのかもわからないままに ぼくはふ…
* july, july, july,──世界の果てにいきたいんだ世界のすべての七月のなかで もうじき晴れるという報せ来て河床に素足を入れる、ほらこれがきみの羊水 夏色の麦いっぱいの平原を飛べる蝶はるかまだ知らないところで落ちる 虹あがるボーキサイトのかなたにて…
* シャシンについて序章 * おれがまず手にとった父のカメラだった。それから小学6年生の修学旅行でトイ・カメラを買った。110フィルムを使用するやつだ。こいつで卒業記念に写真を撮りまくった。でも現像してみれば、ちゃんと写ってるものは数枚しかなく、…
まだ病んでるつもりなのか きみはいつだってそうだ、そうやって労働放棄するんだ きみのかわりにだれが、 だれが見せしめにされるのかも気づかないで どうやってきみはある種の諦観、そして倦怠に踊る? いつまでもいつまでもぼくが見守ってるわけにもいかな…
ひどい週末だった、なにもかもを懐いだして、 かれはふいにモーゼルの照準を合わせる おもちゃの銃を弄び、なにかを忘れようとしても、それはあがきだ やがてかれがぼくに電話を掛けてくるという論証もないではない かれはいった、哲学は手段だと こうもいっ…
これだけのおもいを運んで来るのにかの女はさぞ大変だったろう 廚の火が消えてひなぎくが一輪ざしにされてしまったから ぼくはどう応えたらいいのかもわからないまんまで かの女のなかにいる、もうひとりのかの女の声を聴く ぼくはかの女の手をとって荒れ地…
おれの人間性? かれらの人間性? あるいはかの女らの人間性がベーコンみたいにわるい臭いを放つ 動物農場〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫) 作者: ジョージ・オーウェル,水戸部功,山形浩生 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/01/07 メディア: 文庫 この商…
* 森からぬけでる。するとぼくらはいつも腹をすかし、手持ちはまるでなかった。ちいさなさまよいを味わい、土埃をまきあげる。それは雨の日であってもおろそかにしない。廃屋のなかや水のない涸れた貯水槽のうえでたびたび誓ったことだった。ぼくらは未踏の…
* ホチーチェルイバってなんのことかな──ブローティガン「ディキンソンのロシア語」 * リュックもギターも奪われた。トートだけ持ってわたしは男の室からでてきた。恐怖とともに。財布と電話はある。そいつはいった、おれから逃げるなら荷物は渡さない!──…
* おれたち、淡い夢のように糞をたれ齢をとっていくか!──中上哲夫「旅へ!」 * 7月12日 固茹で卵を3つ喰う。パプリカをまぶして。午前はずっとひとりでリハーサル。今回、ビザールを持っていくことにした。いつものチューニング。画材を鞄につめる。大阪…
* 雨に煙れる町のむこうがわで一握りの石を拾いあげるきみへ 時折ぬかるんだ道に足をとられてきみを愛おしくおもう夕べ まやかしのこととおもえば少しは気が楽か英雄不在の失意のなかで あじさいがゆれるゆれるまたゆれてやさしさなどをあざけりゆれる 光り…
ビール、ベビーチーズ どうしようもなくゆうぐれて見えなくなってしまった もはや、ちがうなにかでしかないぼくの魂しい いるはずのないひとびとをおもい、 起こり得ないことをおもうとき、 翅のつけ根から、 激しく傷む どうせきみたちはもう遠くへいってし…
夏の匂いがする、──ぼくはつぶやく かの女たちにできることはもうなにもない、──ぼくはやぼやく 母は家をでたらしい、 姉は離婚したらしい、 妹たちはそれぞれどっかで暮らしてる かの女たちがどこにいるのかなんかぼくの知ったことじゃない あの家のなかで…
できればもう少しでいいからましなものをと求め、 なにも手に入れられないことの憐れさ だれもでもない、 なにものでもないという事実、 受け入れようと受け入れまいとそれはおなじこと だってきょうも郵便受けはからっぽで だってきょうもあしたの喰い扶持…
地下鉄 水に充たされた花野であしたの仕事がないという事実を呑む なんてこともなくダートを走り抜く馬みたいな勢いが要る だのに空気の抜けたダッチワイフみたいにおれは存る たまたま掴んだ書物と、たまたま掴んだ絵筆が、 しつこくおれを狙ってる、 どう…
電話 レイの母親としばらく話をしたのはもう5日もまえだ やつはまだおれをうらんでるだろうかとおもう でも、どうだっていいこと やつもおれもろくなもんじゃないから ふたつのけつに悲しい蠅がとまって あじさいがゆれる、またゆれる その振れ幅にしぶく、 …
夜ふけの通りをわたってすぐに 光りのきれっぱしが飛んで ぼくに迫る ブレーキ、 焦げるタイヤの臭い、 むかってきたのは40女の乗ったルノー 醜い皺をいくつもつくりながら かの女は窓からかいなを突きあげて 怒り声をあげる それはまったくの瞬間でしかなく…
哀傷というのか、輪郭というのか、とにかくそんなものに搦まれて、 おれは身うごきできなく、なってしまってる 電話帳の最後に記された番号と、 いずれだれもかれもがいなくなるという事実 遠くまでひろがる溝の澱でいま 6月が燃えあがる そして医者がいう ─…
万人の共通コードは好悪の感情のみである。好きだ、嫌いだ以上に説得力を持った言葉を私は知らない。とにかくものを伝える以前に不要なコードが多すぎる(1988、「ロッキング・オン」岩見吉朗) 茹で蛙の梅肉ソース和え 懐かしい映画をいくつか観た、「ゼイ…
* 自由なく死なねばならんのか墓建てらるるひとびとよ詠え 風車やがて棄てられぬ恐山の遠く遠く翳むところまで 花車老いたれる陽よしめやかにいつか語れる憾みを持たず 押し花のなかに帰らん跫音のやさしきノイズひとつひとつと 遅春の木戸にふくらむ月のか…
05/17 気分がよくなかった。午まで眠り、起きて鶏胸肉の野菜炒めをつくって喰う。ライブのまえに映画にいこうとおもっていた。ところが雑務に追われ、けっきょく間に合わなかった。カラオケ屋で時間をつぶし、十三へ。電車はえらく混んでいて、つり革にすら…
あーっ、なんてことだ。 この本棚は無印良品で買ったものだ。およそ7年まえに。表面を紙やすりで削り、塗装した。本をどかすと、森山大道の写真が貼ってある。──その本棚がそろそろいっぱいだ。危険だ。醜怪だ。ちなみにいちばん上にあるのはポルノ本やソフ…
おまえら うそをつくな さみだれをたたえよう いつかたどりつくまえに くたばっちまおう 花びらだわずか どうなってるんだって いうな花の名は いなうな花の字は おまえら ほえかける あの子のおもかげ そんたくのはて あこがれはつめたく するな逃げるなと …