みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

祈り

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 なにもかもが融け合うみたいで、それでもけっきょくすれちがうだけ
 やがてきみをぼくが発見するという論証はなく、
 かれがでていって帰らないという仮説が、
 頭をもたげるんだ、
 だから週末のモータープールで、
 ぼくはうつくしくも祈ったんだ
 ぼくはあさましくも祈ったんだ
 花が落下する、
 もうじき発電が終わる、
 どうして男のさがはこんなにもぐずついてんだよ
 かれの青い眼がいつもより、青かったせいか
 ぼくはたださみしいだけの男だった
 ただ猜疑のつよいだけの男だった
 やがてほとりに立って、
 いままでの営みと、
 欲望を棄てる
 心をひとつ
 犯されながら、
 ついに帰って来ない、
 かれもぼくもきみもだ
 ぼくは腹をすかして、
 ぜんぶがぜんぶ凍結した世界をおもい、
 土を嘗める、
 河を嘗める、
 けっきょくはすれちがうだで終わってしまうものたちのなかで、
 紙片に書きつづける、おもいついたことを、
 どうせだれも読みもしない
 それでもいい、
 だってこれこそがきみがぼくを発見するという論証なんだよ、
 でも祈りを検証することはできないだろう
 夏草がなびく
 凪になる
 みんながそれぞれじぶんにしてやれることを忘れてる、
 そんな夜があればいい、
 あればいい。