みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

コラール

 

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 ぼくがいいたいのはそういうことじゃないくって、
 たとえば蛍火が夏のラインをかすめていったあとの、
 そのガードをいまいちど確かめたいんだっていったあのとき
 夏草がえらく繁った港町の稜線、
 車が遠ざかる一瞬、
 光りが光りでなくなる一瞬、
 つまりはそういったもろもろを見、
 確かめたいんだって
 
 ぼくの位置のふたしかさ
 きみの未来のふたしかさ
 見えるものすべてのふたしかさ
 そんなものが中空に飛来している
 なあ、どっかへ遊びいこうよ
 でも、きみはちがうという
 ぼくがいたいのはそういうことじゃなくって、
 夏がはじまったとたんになにもかも落ち着かなくなって、
 あらゆるところで翅をふるわせるみたいに存在してるってことなんだ
 
 ぼくはそれらをたしかめる
 きみはたぶんそんなことはかまやしない
 緑色の熾きが澱のように重なるとき、
 ぼくはたったひとりきみのために
 トースターの電源を入れる
 そして朝餉のなかの、
 ふたしかさのなかで、
 たぶんきみが幸福であればいいなんてことをかぼやいたりするんじゃないかな?