みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

no love, no love

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ビール、ベビーチーズ
 

 どうしようもなくゆうぐれて見えなくなってしまった
 もはや、ちがうなにかでしかないぼくの魂しい
 いるはずのないひとびとをおもい、
 起こり得ないことをおもうとき、
 翅のつけ根から、
 激しく傷む
 どうせきみたちはもう遠くへいってしまったんだ
 ぼくはここでずっと他者の幻影とともにして、
 夕餉にシメサバを平らげる
 こいつは淋しい

 きみにだけいうよ、どうやら左手を痛めてしまったみたいなんだ
 手首の軟骨がずれてしまったのか、動かすたびにつらいんだ
 これもみんなまえまえから気づいてた、ビールとベビーチーズの関係性と、
 その曖昧さが引き起こした顛末に過ぎないんだ、──そうきみにだけいうよ
 恋人たちの坐席をひとりの男が横たわり、
 警報器が作動する、
 秘密は守られた、
 それでもぼくはここでずっと他者の幻影とともにして、
 夕餉にシメサバを平らげる
 こいつは淋しい
 ものです。
 

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レンタル・ビデオ──片平誠に捧ぐ
 
 どうしたものか、あなたが熾きに立っているようで、
 どうしたものか、あなたが曇りがらすを横切ってしまいそうで、
 ぼくはとてもおそろしい、ぼくはとてもおそろしい
 もっとも再現性のないやり方で、あなたはこの道を来て、どっかへ消える
 もはや絵葉書も、ボートもSHBもない果ての果てで、
 きっと忘れてしまったんだ、ぼくはなんだかあなたもろとも
 それがどうした、
 かの女がなにをいったというんだ、
 やがてぼくは3階の窓から、
 旅人に同化する、
 あらゆる化身されたものたちのなかで、
 あなたは最良で、
 最悪だ
 蚯蚓色の膚をして夕景一点を辿る
 ぼくはかつて舞台で読んだ、
 片平誠の詩を一篇、
 アイベキュアパードゥン?
 それがなんという詩だったかはもうわからない
 かれのバンドは解散してもう10年以上経つ
 旅人でないひとがいるのでしょうか、そうかれは尋ねて、
 どうしたものか、ぼくは履き古しのズボンを洗い、
 音楽を聴く
 ズボンなしで、
 ぼくは音楽を聴いてるというわけなんだ
 かつてのあなたの皮膚感覚、
 かつてのあなたの信じた天国、
 なにもかも木馬のように朽ち、
 あるいは解体され、
 なにも見えなくなったときに実存とか、現象だとか、いってみて、
 もし愉しいのなら、もうずっとあなたのことを懐いださずに、
 ただあなたを赦して、ぼくが発したあらゆるスペクトラムを否定してあげたい
 アンナ・Pは消えた、
 アレックスは死んだ、
 マーロウはハーモニカを吹きながら去っていき、
 やがて音楽は止む

  頭を開いて
  頭を結んで
  さらに別の
  針の山へ/ババンガ「針の山」

 それじゃあ、ぼくはレンタルビデオで、
 他人の人生を狩りにいきます。 

 

旅人でない人がいるのでしょうか

旅人でない人がいるのでしょうか

 
アイベキュアパードゥン?

アイベキュアパードゥン?

 
眼球の空

眼球の空