ひとたび花に臥す
すれば自身の姿さえも
見えなくなる
ほんとうになくなった
遠路の果てで
じぶんを見失う男
かつてはなまえがあったはずの、男
ほら、プールサイドを歩いて、
他者たちのかげを数えてるやつがいる
もしできるのなら、
そいつを突き落としたい
かげになまえのあった時代から、
遠くはなれてしまい、
いまでは鳥のかげすらも、
人間になってしまう
深夜、
再放送の特撮ヒーローものを観ながら、
アルコールのかわりに炭酸水を呑む
緑色の仮面が
廊下に飾られたまんま、
埃をかぶってる
「父さん、
ぼくはあなたを殺したい」
ジムの歌声が聴きたくなる
花にひれ臥してさ。