蟻塚によじ登る夢を見た
じぶんがアリクイになった夢
過古からやってきてはやがて現在へと定着する夢
落ちてきた不運をみなスクリプトしつづける夢
ぜんぶがじぶんの不始末からはじまってる
それが夢のなかの、
あらゆる穴に符号する、
ゆるい神経痛だ
「ダニエラの日記」をだれか買っておいてくれ
いつでも悪夢を見られるような、
仕組みが欲しい、
つまりはいつでも、
眼を醒ましてゆっくりと、
現実を定着できる液体が欲しい
旧十和田駅、
製材所があったあたりで泣き声がする
そうさ、まさしく人間が泣いてる声だった
しかしその駅すら、もう2年まえのまぼろしだ
果たしてそれはほんとうに人間だったのか
アリクイの鼻が鳴る
定着液が誤って零れたんだ
ぼくはもう人間には帰れない
どうか人語で話しかけないでくれ