みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

あるいは主人の非在

 

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 絶つ定め あるいは祝賀歌いたる余生のなかの雁の啼き声


 身を放つ 窓の眺めが光りする、いつかのような死へのあこがれ


 きょうもまたさよならする両手 幽かなひとのかげまだ残る


 車蜻蛉・アンドロメダよ銀河するおれの永遠曝す午後2時


 時と時の硲よ いまだ知られざるわが誕生の日の陽だまり


 青かびのチーズが臭う食卓にわれも知らない小人が登る


 私性なき詩を書きためてやがて死ぬわれら世代の青き黎明


 男めら鍬降り下ろす麦畑に一羽の希望墜落したり


 永い夢ふいに眼醒めるときにおり片手で林檎握つてゐたり


 少年のマントひらめく夜がまだ若い顔して帽子をかむる


 夏がまたわれのうちなる戸を叩く季節の声を遮りながら


 もの憂げな猫の眼球運動す 藪の彼方で輝きながら


 わかれわかれのY字路遠くわれを呼ぶもはや失くした憧れのため


 涙 大人になったぼくをまだ信じられない紫陽花の花


 吊るされしトミノの地獄壜を吐く実験室にがらすの天使


 拓かれし荒れ野のなかの刈り人はみな遂に帰らず


 ゆうぐれのミートマツダよ店員の虚数かぞえる主人の非在


 手心もなくてわれをば否定する若い男の死んだブルース


 暮れる陽よみどりのなかに沈みゆくわが一切を忘れ給しめ


 ひとびとはどこへゆくのか花鋏錆びつつわれを待てる夜


 言葉なき歌が聴ゆる 夏がいま帽子をぬいでこちらにむかう


 さびしんぼう ぼくのおもいをすりかえる あついばかりのこのくやしさよ


 または陽の残照よ 詩を書くひとが浮遊しながら没落したり  


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