みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

あたらしい出版物

 

 新作を3つ、製本直送より販売を開始しました。写真と水彩画、そして詩です。サンプルも一緒にアップしているので気に入った方は是非ともどうぞ。よろしくお願いします。

 

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no title(無題) / 中田満帆写真集

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”gone” mitzho nakata / paintings works : 2003-2019

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それはまるで毛布のなかの両手みたいで/中田満帆詩集

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多くのひとは

 

 多くのひとは雲のなかで目醒めたりはしない
 水のなかで熱くなったりもしない
 そして炎のなかで溺れたりもしない
 したたかな晩夏の光りのなかで芽吹き、
 やはりしたたかな初秋の光りのなかで凋れるものはなに?
 もはや犯意を失った群小詩人のなかにあって、
 わたしはひとり、草むらを歩く
 だれもわたしのことを知らないということの不安を
 だれもきみのことを知らないという事実で埋めようとしてる
 質問?──それもいいだろうけど、
 けっきょくは表面をなぞっただけで、
 なにもわかり合えないということ
 たったそれだけの事実がわたしに詩を書かせる
 箒に寄りそう木枯らしみたいな、つつましい事実よ、
 眠れ、眠れ、眠れよ
 きみたちのために寝台は空けておいたから
 もう大丈夫、大丈夫だといいかけてやめたのはなぜ?
 きっとふりまわした花みたいになにもかもが奪われて死ぬ
 だからか、外套を投げてビルの屋上を歩きたい
 多くのひとは雲のなかで目醒めたりはしない
 水のなかで熱くなったりもしない
 そして炎のなかで溺れたりもしない
 だのにわたしはそうでもしなければもはや、
 生きるのもむつかしい
 きょうで港湾労働も終わった、
 しばらくはだれとも会わないでいるだろう
 アパートの床に素足を立てて、
 やがてわたしは雲のなかで目醒める
 水のなかで熱くなる
 炎のなかで溺れる
 そうともさ 
 きみは?