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児戯すらも思想足り得ん雨の午后訪れたるを危むるまでは
撮影者不明の女ひとりおり素行調査の夢はふくらむ
逃げ水の輝く晌──繋船の窓にわれいる不在のために
苺月熟れる梅雨かなあじさいの花の盛りに埋もれるひと
梅の木のあふれる私恨道半ば斃るるままにされる花びら
前線のつよき夜あり前借りを忍ばせて帰る傘の内奥
眠り草咥えてひとり生家断つ血の果つる雲路のゆくえ
肉体を持たない男古帽の主人の不在ひとり憩えり
転生の蛙の一語ならずして神の金曜占星術よ
生贄のはらわた熱く怨みとは兎のようだと話す男爵
死に給いしものらすべてわが僕と語る公爵夫人
姉殺しの夢から醒めて訥々と語る犯罪歴とわれ
犠牲なきホームベースのうえをゆく走者のひとり不貞を赦す
花月の未知なる化身スカートの足をまっすぐ泥になげだす
妬心さえブルースとなる自己破壊して蘂ふたつかさなる
つつましくあればいいのとユキがいう男鹿月まえの罪の扉よ
汗しきる冷蔵倉庫バナナとは蝶鮫月の使いの玩具
初茸の子供のような身が育つ長い休暇の収穫月よ
狩猟月 けもののようなまなこしておまえが坐る檻のただしさ
夜を撃つビーバー月よ司祭らが幼い臀を鞭打つ喜悦
たったいまきみを愛した 寒月をさえぎる樹木見あげるままに
エロスとは光沢 河を渉るとき、きみの布地のひらめくゆえに
だれにも変身できない じぶんの布がひらめいて消え去る
愛のない月の光りのむごさ照る汚穢のなかに鞭が放たれ
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