みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

roadman

 

  映画「ホーリー・モーターズ」に寄せて

 
 横たわってしまいたい
 たとえば毀れたラジオのように
 死を恥じることのない終焉を描きたいとおもう
 自動車がゆっくりと通過してゆくなかで
 なにもかもが意味をなさず、
 だからといって、
 貶められもせずにいる、
 そんな風景を見たい
 かつてわたしは
 入り口のない町にいた
 片足の男がモップを片手に歩いて去る
 濡れたモップの、毛先の痕が通路を光らせる
 やがてなにかが訪れそうで、決して訪れない
 問いかけた貌はやがて漂白されて立ち止まる
 ふたたび夢を建築するためか、
 男たち女たちが倉庫のなかに都市を再現する
 じぶんの人生を再現する
 なにがまちがいで、
 なにが正しいかは役者次第
 きみを演じる他者のためにいったい、
 どんな柩を用意するのか
 ゆっくりと明けてゆく通り
 だれかのおもいを曳航しながら、
 不滅という二字に敗北するだけの生活
 ロードマンはいつ眠る?
 
 もしここにきみがいたなら
 ぜったいに赦しはしないだろう
 きみの代役を射殺すべく、
 狙いを定めるだけだ
 おれは車のなかで衣装に着替える
 だれかの人生を確かめるため
 再現するために着替える
 だれともわかちえず、
 さらに誤解されるための人生
 たとえば腐った果実のように
 死を曝すことに脅えず、
 またこれを善しと見るとき、
 かならずだれかがおれの手を使って、
 舞台をばらまいてゆく
 緞子がかぜにゆれ、
 したたかにいま、
 頬を打つ
 迷いそこねたあまたの男女が
 列をつくって発送窓口にならぶ
 左手の指が3つない男とむかい合い、
 書類に記入する情動
 午から夜にむかって走る馬のようなひと
 夜から朝にむかって眠る草のようなひと
 だれかのおもいが憎たらしくなる
 声のとどかない帯域に沿って、
 ロードマンはいつ眠る?