わがうちに育ち来たりてまだ翅を震わせている夢を喰う虫
真夜中の廚に青く発ちのぼる妹未満のきみのあやかし
空がまだ未然形なるときをいまなだめすかして連用するか
たそがれの檻のなかにて鳥影を飼うことのみが赦されており
逆あがるきみの記憶の襞にさえ触れることさえできない2月
星を招く きみの足跡茜色 だれもいないと独りごちるに
明けようが 暮れようが デジタル化された心臓が止まらない
水を汲む きみのおもいに触れていた手ざわりばかり桶にあふれて
石ひとつ 雲のふたつが雨を呼び 虹のむこうに果皮がめくれる
She said, She said, She said, ふたたびきみが語る風土記よ
さしすせそ さ行ばかりが悲しくて欄干になびくタオルケットは
革命歌御詠歌主題歌手鞠歌やがて失うハマナスの歌
臥所なき男たちかな海ちかき甍のうえを歩くものらは