みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

虹(In rainbows)

f:id:mitzho84:20210216120604j:plain

 


 わがうちに育ち来たりてまだ翅を震わせている夢を喰う虫


 真夜中の廚に青く発ちのぼる妹未満のきみのあやかし


 空がまだ未然形なるときをいまなだめすかして連用するか


 たそがれの檻のなかにて鳥影を飼うことのみが赦されており


 逆あがるきみの記憶の襞にさえ触れることさえできない2月


 星を招く きみの足跡茜色 だれもいないと独りごちるに


 明けようが 暮れようが デジタル化された心臓が止まらない


 水を汲む きみのおもいに触れていた手ざわりばかり桶にあふれて


 石ひとつ 雲のふたつが雨を呼び 虹のむこうに果皮がめくれる


 She said, She said, She said, ふたたびきみが語る風土記


 さしすせそ さ行ばかりが悲しくて欄干になびくタオルケットは


 革命歌御詠歌主題歌手鞠歌やがて失うハマナスの歌


 臥所なき男たちかな海ちかき甍のうえを歩くものらは